沖縄と五島
本日は、最近読んだ本の感想のご紹介です。
なぜ五島に住んでいる私が、沖縄の事を注視しているかと言うと、「五島と沖縄」には共通点が多いからです。ざっと挙げると、
- 国境付近であるため、国際政治のリスクに振り回される
- 国への依存度が高く、補助金の支給額も大きい
- 住民の意思決定権が、無視されることが多い
- 外部とは物理的に断絶された島
私としては、沖縄と五島を(勝手に)兄弟みたいに思ってまして、
「同じジレンマを抱える島として応援したい」
という部分があります。
経済対策は外資の誘致
書籍の中で、橋本氏は沖縄問題解決として、「経済力の強化」を唱えています。その根底には、
- 独立国家(地方)であるためには、強い国である事が必要
- 強い国家(地方)になるためには、強い経済が必要
という認識があるかと思います。
そのため、橋本氏が提唱する「プランX」は、
沖縄の経済的な恩恵を最大化させる
ようなプランです。
観光と貧困
その中身は、一言で言えば、
「東洋一の観光リゾート」
を目指す路線です。イメージとしては、シンガポールですね。
ただ、既に沖縄は日本の中でも「観光地としてのポジション」を築いていますので、更にそれを磨き、世界に通用する「観光路線」へとアクセルを踏む感じです。
しかし一方で、既に経済全体に占める「観光の割合」が高い沖縄ですが、相対的な貧困率も高く、出生率も高いというデータがあります。
「貧困のための経済対策」は逆に貧困を助長するのではないかという示唆に富んだ記事です。
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(2ページ目)沖縄から貧困がなくならない本当の理由(6)貧困の本質 | タイムス×クロス 樋口耕太郎のオキナワ・ニューメディア | 沖縄タイムス+プラス https://t.co/3DMyPgLc5l @theokinawatimesさんから— 中西だいすけ (@wakuwaku230) 2019年3月12日
観光で恩恵を受けるのは誰?
こうしたデータや記事を見ていくと、
- 観光政策で経済的な恩恵を受けるのは、一部の企業や株主
- 多くの労働者は、経済的な恩恵に預かれない
という実体が浮かび上がってきます。もしそうでなければ、沖縄の貧困率・出生率はもう少し本土に近づいても良い気がします。
つまり、
観光政策の「経済波及効果」はそれほど高くない
というのが私の意見です。実際、2018年に世界遺産登録された五島列島(潜伏キリシタンと関連遺産)を見ていると、
- 確かに、各スポットの「観光客の数」は数倍に増えた
- しかし、「観光消費額」がどのくらい増えたのかは疑問
- 更に、労働者の「実質賃金」に与えた影響は極めて限定的
という感じがします。
そのため、例え沖縄が観光に磨きをかけて、シンガポール並みに潤ったとしても、沖縄県民の暮らしに与える影響はさほど大きくない、と言うのが私の意見です。
国とのけんか方法
さらに本の中では、
「いかに国と喧嘩をするか?」
というテーマで具体的な方法論が述べられていました。
ポイントとしては、
徹底的に相手の嫌がることを仕掛け、譲歩を誘う
という部分でした。この辺りは、バリバリ現役で実務を経験した事があるだけに、さすがやなあと思いました。
ただ、それを実行するにはかなりの勇気と覚悟が必要だから、現実的に
そこまで勇気ある人いるかなー?
という感じもしました。ネットでの評価も見ていると、沖縄の住民の中には、
そこまで本気で、独立路線を目指さなくて良いのでは?
という意見も多い感じがします。
似たような事が、五島列島でも起きていて、私が個別にお宅を回って不便な点などを尋ね歩いていると、
別に不便なことはなかよ。今で十分じゃけん。
と仰る方が、少なくありません。
その辺りは、移住者を始めとする「変化を求める」都会人が、「変化を求めない」島民の方の暮らしにギャップを感じる部分かもしれません。
まとめ
橋本氏の本を読んで思ったのは、
- 「東洋一の観光リゾート」は、県民全体への波及効果が疑問
- 「国とのガチンコの喧嘩」を望んでいる人が多いのか疑問
という事です。言い換えると、
- 「外から見た正解」(=いろいろな経済指標の向上)
- 「内から見た正解」(=本土とは異なるハッピー度)
この間には、少なからぬ温度差があるような気がしました。
そのため、もしも橋本氏が沖縄の知事に就任して、本書に書かれたような「大胆な改革」をした場合、多くの沖縄県民は
なんでそんなことするの?
と感じるような気がしました。
ソトモノの視点や発想も大事ですが、やはり
そこで暮らす人たちが、何を本当に望んでいるのか?
見極めることも大切な気がします。