進む規制緩和
11月6日に開かれた「未来投資会議」では、銀行と地方の交通機関がテーマになったそうです。日経新聞によると、
地銀は地域の中小企業などの重要な金融インフラだが、超低金利の長期化や人口減少で経営環境が悪化。バスも地域交通網維持で重要さが指摘される。
ということで、独占禁止法の改正を目指しているそうです。
しかし問題は、大きく二つあります。
①地域の公共交通網は、既に競合相手がいない寡占状態
②規制を緩和した後に、「新たに参入する企業」がいない
こうした実情を踏まえず、単に「規制緩和をすれば問題は解決される」という政府の決定は、方向性としては正しいですが、もう一歩踏み込みが足りません。
他の分野では、漁業権の採択を巡っても同様。新規参入を促すために規制緩和をする方針が示され(産経Biz)、
政府は6日、漁業権を地元の漁協や漁業者に優先的に割り当てる規定を廃止する水産改革関連法案を閣議決定
しています。こうした流れを受けて、「既存のルール」を変更する方針が示されています。今後ほかの分野でも
異業種が参入しやすくなる
流れが全国的に広がっていきます。
変わらない地方の交通
一方、今までの規制が問題視されている地方の「行政」はどうでしょうか。
バスの航路も船の航路も実質的には寡占となっている五島市では、昨年、九州商船がストライキを起こしました。
https://nakanishidaisuke.com/2018/02/01/kyusyu-shosen/
記事にもある通り、会社として、儲けを目指す合理的な努力は、「住民サービスの低下を招く恐れ」があるため、儲けが出ないルールが適用されています。
そうした問題を受けて、五島市では「交通網整備対策特別委員会」が設置され、検討が行われていたみたいです(内容はこちら)。
要点をまとめると、
- 現在のサービス基準を見直すと、住民サービスの低下を招く恐れがある
- そのため、現状ではサービス基準の変更は見送る
- 独占によるサービス低下を防ぐため、九商には「申し入れ」をする
という、形です(詳細はこちら)。
市議会の検討会も、市民の票を得て議会を運営している以上、市民に嫌われるようなリスクは取りたくない、というのが実情なのでしょう。
しかし、こうした問題の先送りは、長続きしません。
なぜならば、独占で「サービス基準」を守る企業は恒常的な赤字体質で、いずれ体力が尽きることは明白だからです。
近い将来、五島産業汽船のように経営難に陥り、「ある日突然」会社が蒸発してしまう可能性が高いです。
変えるリスク、変えないリスク
ここで問題点をまとめると、市民も含めて「現在のサービス基準」を変えないという判断は、
- 「今」のリスク(住民の利便性低下)を回避できるが
- 「将来」のリスク(会社の倒産)を回避できない
ということです。
もちろん、多くの住民は「今」のリスクを望んでいないでしょうから、民主的な政治判断としては正しいのでしょう。
ただ、これが続くと地方は「倒産の嵐」があちこちで吹き荒れます。
国はある程度、身を切って「変える選択」に舵を切っている一方で、地方の行政が「変えない選択」を堅持しようとする部分で、今後も国と地方の「温度差」が顕在化していくのでしょう。
チキンが没落・勇者が成功
ここで個人的な意見を。
- 世界では、かつてないスピードで変化が起きていて、
- 互いに多層的に繋がってしまっているため、
- 変化を拒むという「鎖国」は出来ません。
そうした環境の中では、
世界は技術によって変えられる
のが真理です。
これは受動的な意味と能動的な意味を含んでいまして、
①何もしなくても、勝手に世界は変えられてしまう
という面と、
②リスクを取って技術を駆使すれば、世界は主導的に変えられる
という面があります。そうした中では、必然的に
「変化を拒むチキン野郎」
よりは、
「変化を求める勇者」
の方が、長期的に見て成功確率が高い気がします。
地方行政の首長さんたちは、「現状を変えないこと」が長期的に見てどれだけリスクの高い判断なのか、理解すべきです。