資本家にとっての「都市」は自動販売機

  • 2018年9月25日
  • 2020年3月8日
  • 雑談

出稼ぎ労働者の休日

私たちが香港を訪れたのは、日曜日でした。

その日は朝から、道路の脇にブルーシートを敷いているフィリピン・インドネシアの女性たちがたくさんいました。

聞くところによると、彼女らは香港のハウスシッター(家事や身の回りのお世話)として出稼ぎに来ている方たちで、収入の殆どは仕送りに使っているのだそうです。

彼女らは自分の家を持たず、雇い主さんの家で月~土曜日を過ごすため、日曜日が唯一、外で過ごすチャンスなのだそうです。

しかしそうした方々がいるおかげで、夫婦も共働きで忙しく働く香港の社会は回っているといえます。

香港という都市

めまぐるしく新しい建物が建てられて、経済活動が行われる香港では、日本以上に早いペースで消費と生産活動が繰り返されます。

そして都市は、全世界のどこへ行っても、画一的な基盤を整えていきます。その共通点とは

  • ファストフードやグローバル企業が進出する
  • ショーウィンドウは明るく、歩道は歩きやすい
  • 誰でもお金があれば参加できる

そうした共通点を持ちながら、都市は「循環速度」の向上を目指します。

この加速を維持する上では、働き手として、海外から労働者の手が必要不可欠となっています。

そして人が移動し、モノが売れ、沢山のことを消費することによる「循環」が生み出すのは、経済成長であり、利潤です。

で、その利潤を結果的に求めている人は誰かといえば、やっぱり不動産を動かすお金を持っている、資産家や投資家だったりします。

資産家から見れば、都市そのものが大きな自動販売機のようなものであり、経済が循環すればするほど、お金が転がってきます。

そんな彼らからしてみれば、理想的な社会の方向性とは、規制緩和によって、より多くの人が都市で生活をし、都市でお金を消費する社会です。

  1. 資産家・投資家が「利潤」を求める
  2. 経済活動で「利潤」を生み出す都市が生まれる
  3. 「循環」の速度を上げるために労働者が都市に生まれる

という形で、出稼ぎの方も含めて都市というフィールドで人間が経済活動に貢献します。

そこは表向き、「自由な経済活動」という看板を掲げていますが、年金や社会保障の充実していない香港では、循環に乗り遅れることが生活に支障をきたすという点(高い家賃が払えない)で、日本以上に過酷な社会である印象でした。

投資マネーのリスク

それと同時に、海外からのマネーを受け皿として成り立っている都市国家は、ある意味で非常に危険なリスクを抱えています。

グローバルに移動可能なマネーが退避すれば、一瞬にして社会保障や安全保障といった「国家の運営」が出来なくなってしまうからです。

昨今、「暗号通貨」の台頭を背景として、「利潤を求めるマネー」は、ますます政府や国といった規制当局からの逃げ足が速くなりました。

逆に言えば、投資マネーに依存する国のリスクも、それだけ大きくなっている、ということです。

国家に対する信頼は、マネーの流通速度に比例して小さくなっていくので、世界は相対的に、ますます不安定性を増しています。

都市生活をしていると感じることですが、

安全な場所はどこにもない

というのが、一つの大きな事実です。