我が国の財政
「我が国の財政」というお堅いテーマの講演会を、五島市役所で聞いてきました。
驚いたのは、平日の昼間の忙しい時間帯であるにも関わらず、多くの市民(+役場の人とか議員さんとか)が参加していたことです。
講演が行われた部屋には100名くらいの人が集まっていて、関心の高さが伺えました。
個人的には、「財務省の見解」として特に目新しい情報はなく、新聞やニュースで耳にする、「従来通りの見解」のおさらいのように感じました。
そこで本日は、出来るだけ難しい言葉は使わずに、財務省の方が言っていたことを要約してご紹介します。
スーパーざっくり内容をまとめると、
- 現状:財政状況が悪い
- 今後:財政の見通しは明るくない
- 結論:財政健全化をする必要がある
という感じです。それでは一つずつ、ご紹介します。
① 財政の現状
1950年代からの長期的な傾向として、歳出が歳入を上回っています。
特に平成に入ってからは、「ワニの口」と表現されるように、次第に歳出と歳入の乖離が大きくなっています。
歳入と歳出のアンバランスがもたらすのは、「公債残高の増加」でして、H30年度は883兆円(見込み)という天文学的な金額になっています。
よくメディアで取り上げられる「○○兆円の借金」、というヤツです。
そんな政府の債務残高をG7の国々と比較すると、対GDP比では200%超えで、圧倒的な1位です。
ちなみに、財政収支をG7の国々と比較すると、対GDP比では米国が最も悪く、日本は下から2番目、となっています。
個人的な意見として、日本人はこういう○○ランキングに縛られすぎです。就職とか人気企業とか、メダルの個数とか、幸福度とか。
これは電力の問題と同じですが、事情の異なる国々と比べて良し悪しを判断するのはお門違いで、問題の本質を見誤ると思います。
あえて他の国と比較するならば、
- どういう点で日本と同じ経済・社会状態なの?
- どういう点で日本と異なる経済・社会状態なの?
を併せて見る必要があるでしょう。具体的に言えば、日本は世界最大の純資産国で、国債の海外保有率が低いという事情も踏まえて考えるべきです。
② 財政の見通し
少子化で社会保障の費用が増えることが、財政を悪化させる一番の要因です。
公費の負担が大きくなることから、給付と負担のバランスは、今まで以上に大きくなることが容易に想像できます。
これまた他の国との比較が示され、
- 日本:高齢化率が高い割に、国民負担が低い
- ドイツやフランス:国民負担が大きく、高齢化率が低い(日本と比べて)
と紹介されています。
そうした世代間のアンバランスを是正する対策として、「社会保障と税の一体改革」が行われていました。
端的に言うと、支出を減らして歳入を増やす、ということですが、歳入を増やす手段として消費税のアップが行われました。
ここで「なぜ、消費税なのか?」と題してポイントが3つ紹介されています。
-
景気や人口構成の変化に左右されにくく、税収が安定している
-
働く世代など特定の人に負担が集中することなく、経済活動に中立的
-
高い財政調整力がある
そのため、「社会保障の財源を調達する手段としてふさわしい税金」と述べられています。
個人的な意見としては、「本当にそうなの?」と疑いたくなります。
なぜなら消費税は、
- 景気が悪化すれば消費は落ち込むから不安定であり、
- 収入の低い人ほどダメージが大きいから中立ではなく
- 他の税と比較したデータがないから、「財政調整力」は不明
と言えるからです。
要するに、財政改善の手段としての増税は、本当にそれが最善の手段なのか?
という部分が疑問として残りました。
③ 財政健全化をする必要がある
こうした財政赤字の拡大が予想されることから、
- 公的サービスの水準が低下
- 世代間の不公平
- 民間部門の経済活力の低下
- 財政への信認低下による金利上昇
といった問題が紹介されました。
これについては、財政赤字そのものが原因ではなく、
「財政赤字だから、公的サービスや公共事業を減らそう!」
という、後ろ向きな方針への反動として生じる可能性が高いことではないでしょうか。
財政健全化→支出の抑制→景気の悪化
という流れが正しいと思います。
まとめ
細かい数字やデータが沢山紹介されましたが、
結局のところ、日本はどうすればいいの?
っていう部分は今ひとつピンと来ない感じの講義でした。
財政健全化に向けて、プライマリーバランスの黒字化を目指していますが、果たしてそれが2025年に実現するのかは、甚だ疑問です。
消費税の増税タイミングも含めて、これからの動きも見て行きたいですね。