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4ヶ月=120日
生まれ育った千葉を離れて五島にやって来て早4ヶ月。
元々社会人になってから4年間は一人暮らしをしていたので、別に実家を離れることに抵抗感はないのだが、それでも4ヶ月というと、しみじみ感じるものがある。
丁度社会人を辞めてニート期間を過ごしたのも4ヶ月くらい。そして遊び英語力向上を目論んでNZに行った期間も4ヶ月。
1年という単位で見れば3分の1だし、単純な日数で見れば120日間という区切りの良い数。
今回は、会社を辞めて新天地での人生を歩みたいと思っている人に向けて、日本の離島で暮らすというのがどういうことなのか、まずは私なりの教訓を述べたい。
教訓①. 「仕事」は沢山ある
私は長崎の離島、福江島に来てから、結構色々な場所に顔を出して、「こんなことができますよ!」と宣伝して回っている。
そんな事もあってか、先日なんかは行きつけのカフェに行くと、
「バイトの子が急に熱出して帰っちゃってね。悪いんだけど、皿洗いを手伝ってくれない?」
なんてお願いをされた。
私は大学生の頃の経験なんかを懐かしく思い出しながら、かれこれ1時間食器洗浄機を回し続けた。
私にとっては突然の仕事のお願いだったのだが、それはそれで「仕事の原点」に帰っているみたいな心境で楽しかった。
余談だが、私は「皿洗い」という仕事が案外好きである。
そこで求められるのは、圧倒的な「効率性」のみ。
食洗機をいかに休ませずに食器を投入できるか?
ということだけが課題となる。
大きさの違うお皿を仕分けして、皿の種類を確認しながらシンクに漬けておく。
できる限り効率的な作業の方法を頭の中で即座に組み立てて、皿をひたすらに洗っていく。
そんな孤独で地道な作業が案外自分の気質には向いているのかもしれない。なんてことを思いながら、1時間の仕事を終えて、感謝の気持ちも含めて1000円を貰った(普通は750円)。
そんな経験からも分かるように、離島では決して、
「仕事がない訳ではない」。
街を歩けば「求人募集」の札は至る所に見かけられるし、人手が足りずに頭を抱えている経営者が多いのも事実(実際、私はGW中も、行きつけのカフェでバイトをしていた)。
教訓②. 儲かっているお店がない
仕事はある。だけど働く人にとっての関心ごとは、やっぱり何と言っても時給(社員は月給)だ。
最低賃金が715円、平均的なアルバイトの時給が750円であることを考えれば、待っていて人が殺到するような状況ではない。
かと言って経営者のほうも、時給を1000円も出すなんていう気前の良い判断には至れない。
つまり問題なのは、
「会社が従業員に満足のいく給料を払えるほど儲かっていない」
ということに尽きる。
経営者も実際大変だ。
私が聴いた一番悲惨な話だと、最低時給くらいのアルバイトの時給よりも貰っていない(店が儲かっていない)という経営者もいる。
それは要するに、営業日数の数日間(或いは数週間)がただ働きに過ぎないということを意味する。
少なくとも消費者にとって一番身近な存在である小売業・飲食店に関しては、
「儲かってる会社あるの?」
って言うのが私の素直な意見だ。
そう思ってしまうくらいに、離島は消費者に対する「箱」の数が多すぎて、儲かっている業者が少ないように思える。
例えば、福江市内(福江島の人口の半分程度が集中する大都会)で言えば、店舗の数は半分以下でも全く問題ない。
少なくとも消費者目線で言えば、100円ショップとスーパーさえあれば、全然困ることは無い。
にもかかわらず、人通りの少ない商店街で赤字を垂れ流しながら経営を続けている(ように見える)経営者が多いと感じる。
移住希望の人へ
離島移住希望者の人に言いたいのは、
「低賃金の仕事をしていても疲れるだけだよ」
ということである。実際、島の外から来た人が時給700円台のスーパーでレジ打ちをしていても、経済活性化もしなければ、お金の流れが良くなる訳でもない。
そして溜まるのは、低賃金に対する不満、土曜日出勤当たり前なズサンな雇用環境に対する不満。である。
「こんな仕事が出来ない離島はもう限界だ!」
それが島を去る人の最大公約数的な意見だと私は思う。
だから離島では、「自分にしか出来ない仕事」を作れれば良い。
そんなことを言うと、ハードルが高くて難しいことのように思えるかもしれないが、
「決してそんなことはない」
と私は声を大にしていいたい。
その根拠として、離島で(本土の人にあまり知られていない)有益な価値について、3つほどご紹介したい。
離島価値①. パソコン
私がこの島で良く受ける相談で一番多いのは、パソコンに関するものである。
- 古いPCを処分したいんだけど、どうすれば?
- エクセルのこの使い方が分からないんだけど、どうすれば?
- 家にWi-Fiを飛ばしたいんだけど、設定はどうすれば?
- 意味不明なエラーが出てきたんだけど、どうすれば?
私はこちらに来てから、幾度と無くそういった「パソコン関連の相談」を受けてきた。
この離島においては、パソコンに関する一定の知識さえあれば、ある程度のお小遣い稼ぎは可能だ。何しろ
「愛パッドって何ですか?(怪訝な表情で)」
という高齢者がいるくらいだ。
大丈夫。ひとまずパソコンを(ある程度)いじれれば、それだけで貴重な「人財」となる。
そして万が一にもExcelやWordを使えるのであれば、
「貴方は神様ですか?」
というような目で見られる(本当に)。
それくらい、パソコンに関する知識の格差は本土とかけ離れている。私は本気を出せば、パソコンだけで月に10万円くらいは稼げる自信がある。
離島価値②. 学歴
移住希望者にとって朗報なのは、学歴に対する「先入観」が意外と大きいということだ。
私はMARCHレベルの大学卒だが、都会では「ああそう。」で片付けられてしまうレベルだ。
何しろ上にはまだまだ学力猛者たちがいるからだ。実際、私が働いていた会社では、
「よく(そんな大学で)この会社に入れたね。」
と同僚から言われた。確かに周りを見渡せば、東大やら早慶やらの人たちばっかりだ。私はその会社で、ある意味で場違いな存在だった。
しかし、ここ離島では、その「大したことない学歴」でさえ、大いにビックリされる。私が一番閉口してしまったケースは、
「こんなエリートが勿体無いねえ。。。」
と言われたことだ。私は内心、
(そんな言葉は外務省とかキャリア官僚に使っていただきたい)
と思ったものだ。そんなこんなもあってか(?)私は現在時給が2000円以上の家庭教師のアルバイトを2件させてもらっている。
離島価値③. 英語力
これも離島では大きな武器になる。
そして上記の「学歴」とも関わって来るが、島では英語を話せる人が圧倒的に少ない。
英会話をしたい人がいればマンツーマンでレッスンをすれば良いし、複数いればグループで教えればよい。
実際に、私の知り合いでも英語を学びたいと思っている人は少なからずいる。別に流暢に話せる必要なんてない。ましてや
「TOEICの点数が○○だから・・・。」
なんて気にする必要は何も無い。とにかく少しでも英語ができる自信があるなら、離島での「英会話講師」は非常に有難いと思う。
問題はそういう人と上手く知り合えるかということだが、その辺りはとにかく人脈を広げる活動(チラシを配ったりポスターを張ったり)をするしかない。
私は今現在でも、そういう活動を出来るだけ省エネで実践し、顧客獲得を目指している。
離島で減ったお金では4ヶ月で30万円
これはNZ時代(=散財ニート時代)に比べると、圧倒的に安い。まあ離島では、ちょこちょことアルバイトをして収入もあったので、実際に使ったお金で言えば、その倍くらいだろう。
関連記事:4ヶ月で100万円
もちろん、NZ期間中は働きもせずにプラプラと飲み歩いてばかりいたというのもあるのだが、それでも100万円の出費は大きかった。
「ゲストハウスの開業資金にしてくれよ」
と課長に言われて貰った最後の128万のボーナス(5年目退職直前)も、結局はゲストハウスに使われないまま消えてしまった。
そんなことに対する反省の念もあり、離島に来てからは「離島で発揮できる強み」を活かして細々とバイトをこなし、酒代生活費の足しにした。
「それでも結局、収支は赤字ジャン?」
という非難の声も聞こえてくるので、これからの意気込みを述べておくと、離島でガンガンお金を稼ぐ積もりだ。
国境離島新法で無事に採択された「SUP事業」でどれだけの収入が得られるかはまだ不透明だけど、ひとまずはこれを軌道に乗せていきたい。
それで来年度は1200万円の補助金を獲得して、事業を拡大したい。
「儲かる会社」を造ることがWin-Win
移住を検討している人に申し上げたいのは、
「離島でしかできない副業もいいけど、一番チャンスなのは『国境離島新法』だよ!」
ということだ。
私みたいな移住3ヶ月に満たない若者に対してさえ、五島市役所は450万円の補助金を決定してくれた(謝謝)。
関連ページ:国境離島新法
それでもやっぱり、いきなり離島に来る人は不安が大きいのも事実。あんまり無責任な事は言えないが、少なくとも私が言えるのは、
「離島でのたれ死ぬ事はないよ!」
ということだ。だから1年ないしは数年間を棒に振ってでも、お金をもらえるチャンスがあるのだから、ぜひともチャレンジをして欲しい、ということだ。
私は今現在、個人事業主として色々な面倒な作業をしているのだが、とても勉強になることが多い。
- 土地利用に関する権利の問題
- 財務管理、及び会計の問題
- 従業員に支払う給与の問題
- 市役所と民間経営者の力関係の問題
などなど。
大学で経営学を学ぶよりも、数百倍も価値のある勉強が、この離島で(図らずも)学べているという実感がある。
何しろ最高の勉強は、自分の経験としてその知識を消化し、実践する以外にない。
そして自分自身の勉強という側面だけでなく、上述のように離島にとって一番必要なのは、
「従業員に満足のいく給料を払える(=儲かっている)経営者」
である。それが結局は、市役所が口を酸っぱくして経営者に期待している、『雇用を増やす』ということだ。
妥協点を探って
かと言って、そんなにお金儲けで鼻息を荒くして離島に来ると、煙たがれるのも事実。
しかしさりとて、のほほんと田舎暮らしを楽しむには、
低賃金&長時間労働(土曜日出勤が常識)
という壁が立ちはだかっているのもまた事実。
その中間地点を見据える(最低限の生活費として副業をチョコチョコこなす一方、虎視眈々と大きなビジネスチャンスを意気込む)ことが、離島での人生を成功させる秘訣であると、私は考えている。