荒川温泉と五島市議会②市の直営施設化の論点という事で、過去の議事録のまとめです。
引用元
五島市 平成28年9月 定例会
当時の議会では、谷川議員から「荒川温泉(旧豆谷旅館)を市が買収する考えはないか」という質問でした。
目次
Ⅰ. 公的取得の必要性に関する議論
1. 荒川温泉は“五島唯一の高温温泉”という希少性
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源泉温度は60〜70度
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長崎県内で60度超の源泉は
雲仙市・壱岐市・五島市の3市のみ(観光物産課長答弁)
➡ “五島の宝”としての資源価値が極めて高い
→ 公的関与の根拠となる。
2. 適切に活用されていない現状への課題意識
市長・議員ともに以下の認識を共有:
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「交流人口拡大にうまく活用されていない」
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「荒川温泉本来の魅力が活かされていない」
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「地域の観光資源として眠っている状態」
➡ 市が関与し、観光資源として再構築すべきではないかという議論につながる。
Ⅱ. 公的取得の意義(市長・議員が指摘した点)
1. 観光政策の中核としての温泉活用
市長は以下の点を強調:
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交流人口・長期滞在型観光の重要性
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五島の魅力(自然・景観・文化・食)に“温泉”を加えたい
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荒川こそが五島を代表する温泉地
➡ 公的取得は観光戦略全体の強化につながる
2. 荒川温泉の復活は地域維持の鍵
議員の指摘:
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かつては複数の旅館が存在し賑わっていた
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現在は旅館1軒のみ、残りは廃業
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荒川温泉の知名度そのものが低下(最近は「マグロ」のイメージが先行)
➡ 温泉地ブランドの再生には行政の関与が不可欠
3. 地域活性化(玉之浦地区の人口減対策)
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玉之浦地区は人口減少・観光客減が顕著
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温泉を核とした田舎暮らし体験、民泊、UIターン促進が期待される
(支所長の答弁)
➡ 公的取得により地域活性化策を一体的に展開できる。
Ⅲ. 社協が取得した経緯との関係
1. 社協の取得により観光利用が困難になった現状
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社協は施設を福祉施設として活用
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宿泊・観光用途としては再生されていない
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議員:「荒川温泉という言葉が消えた」と表現
➡ 公的取得・公設民営化の必要性を高める背景となっている。
2. 過去議論でも「市が買い取り→民間運営」が提案されていた
市長が答弁:
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平成22年議事録を再確認
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「市が買って指定管理で民間に任せる」案が議員複数名から出ていた
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しかし実現せず、社協取得で現在に至る
➡ 公的取得の議論は“新しい提案ではなく”過去から継続的に存在する論点。
Ⅳ. 公的取得の可能性についての市長の見解
市長答弁の要旨:
1. 「市が取得する」という選択肢は“排除していない”
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「公的取得も一つの選択肢としてある」
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「提案も含めて検討したい」
2. ただし現所有者(社協)が福祉施設として運営中
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既に用途が決まっているため、
ただちに市が買収することは困難 -
公的取得に向けては所有者との協議が前提となる
3. しかし“荒川温泉は五島の宝”という認識は強い
→ 市長自身が 「マルゲリータのような成功事例を五島にもつくりたい」 と発言
(荒川温泉の立地を高く評価)
Ⅴ. 公的取得に向けた課題
議事録全体から抽出される今後の課題:
1. 所有権(社協)が障壁になっている
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社協が福祉センターとして活用中
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市が再取得するには法的・財政的調整が必要
2. 既存旅館・民宿との競合整理
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民宿・旅館が4軒稼働中(うち1軒が温泉)
→ 公が温泉施設を所有する場合、民業圧迫の可能性あり
3. 維持管理コスト
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温泉源の維持、施設保全、老朽化対策
→ 公的取得すれば市がこれを負担することに
4. 地域全体の観光戦略との整合性
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大波止ホテル跡地の再開発、公募型の宿泊施設誘致
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これらとの全体設計が必要
Ⅵ. 総括:公的取得論の核心
議事録から読み取れる論点をまとめると、荒川温泉の公的取得は以下の四つの理由から政策的意義を持つ。
① 温泉資源としての希少性・観光価値の高さ
「五島唯一の高温温泉」「県内でも3市のみ」
→ 公的保全・活用の必要性大
② 荒川地区の人口減・観光減への“起爆剤”として機能し得る
→ 田舎暮らし体験、民泊、長期滞在型観光の核
③ 社協取得により“温泉ブランドの埋没”が進んでいる現状への対策
→ 公的主導によるブランド回復が必要
④ 過去議会でも“市が買って民間に運営させる”案が複数回提案されている
→ 一定の政策的コンセンサスが存在