東京と五島の直行便は五島列島の人口減少対策に寄与するのか

こちらの記事の続きです。

東京から五島列島福江島までの直行便が就航するまで

議会では一般質問の場において、東京との直行便が実現する事により、木口議員が

「大きな人口減少対策になると思う。」と発言されました。

確かに人の往来が増えれば、人口も増えるような気もしますが、私は本当にそうなのだろうか?

と思ったので調べてみました。

直行便就航事例~鹿児島県奄美大島~

観光客数は1.25倍に

奄美大島は本土から遠く離れた離島であり、航空路線の充実による交流人口拡大と地域振興が長年の課題でした。そのような中、2014年7月にANA系列のLCCであるバニラ・エアが東京(成田)~奄美大島線を開設し、奄美大島への国内LCC初就航を果たしました。

下記資料の通り、奄美大島では東京や関西とのLCC直行便が就航して、入込観光客数も大幅に増えました。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001602341.pdf

就航時点のH26年度の70万人台と比較すると、令和元年は約1.25倍の89万人まで入込客数が増加しています。

LCC就航は国や県も期待を寄せており、奄美群島振興開発特別措置法に基づく振興計画でも「奄美大島へのLCC就航」を交流人口拡大や地域活性化の起爆剤と位置付けています。

LCC就航による観光客増加と消費拡大で地域にもたらされた経済効果は年間42億円規模に上るとの試算もあり、この現象は地元で「バニラ・エア効果」と称されました。

奄美大島にはR5年度時点で首都圏への直行便が充実している事が分かります。

2014年からの10年間で成田線・関西線の累計搭乗者数は約135万人に達し、LCCは奄美大島観光に大きく貢献する交通手段として定着しました。

人口の推移

一方で奄美大島の人口動態を見ると、LCC就航後も長期的な減少傾向が続いています。

2020年時点の人口は2010年比で約89.3%に留まり、10年間で1割強の人口減少が起きた計算になります。

https://www.city.amami.lg.jp/kikaku/documents/zinkoubijyon2025.pdf

LCC就航の前後で劇的な人口減少の歯止めがかかったという統計上の傾向は確認できません。実際、2020年以降も高齢化と出生数減少により減少傾向は続いており、直近の推計でも2025年時点で島内人口は5万7千人前後まで減っているとみられます(2010年からの減少率約12%)。

https://www.neriyakanaya.jp/contents/oshima_basic#index_D892VvP6

交流人口拡大の動き

LCC就航という交通革命は、人口減少に悩む奄美大島において「交流人口の拡大」だけでなく「関係人口・定住人口の拡大」にも寄与し得る基盤として期待されており、今後も観光振興策と併せて島へのUターン・Iターン促進策が継続される見込みです。

実際、島内では2017年度から「フリーランスが最も働きやすい島化計画」(奄美市)を掲げてテレワーク環境整備や移住支援に取り組むなど、LCC就航による交流拡大を定住人口増加につなげる施策が展開されています。

まとめ

奄美大島の事例では、首都圏への直行便が就航する事により、

  • 観光客数・入込客数の増加は期待できる
  • 人口減少対策という面では、人口増加までには至っていない
  • 交流人口拡大の糸口にはなり得る

という事が分かりました。

五島市においても、定住未満の「交流人口」拡大には大きく寄与する可能性が高いですが、その先の定住人口増加に関しては未知数、という感じです。

きっと良い形で島民との交流が生まれ、島外出身者にとっても「島の暮らしが良さそう」と思えるような巡り合わせがあれば、少しずつ定住する人も増えてくるのではないかと思います。