記事を書くにあたり、将来を見据えて事業をされている方や、現場で苦労されている方の気分を害したくないという気持ちはあります。ただそれでも、議員として今まで自分が訴えてきたことに責任はあると考えていますし、言わなければいけない事もあると思っています。誰かを恨んだり、貶めたりしたい気持ちは一切ありません。その前提で記事を読んで頂けると嬉しいです。
3月議会では、「①来年度の当初予算」に加えて、「②今年度の補正予算」も審議されます。毎年の事なので割と見落とされがちですが、②は「昨年度の①」です。もっと分かりやすく言うと補正予算とは、
最初予定していたけど、予定が変わって使いすぎたり余ったりした予算
の事です。これはどんな事業や計画にも必ず発生しますので、肝心なのはその「ズレ」がどれだけ大きいかという事です。ずれが大きいという事は、「当初の見積もりが甘かった」という事です。五島市の場合はこのズレが特に大きかった事業があり、それが本記事で上げる「ドローン買物支援事業」です。どれだけズレが大きかったのか、数値で紹介します。
買い物支援ドローン事業の経緯
R5年度の買い物支援
R5年分 | 予算額 | 不要率 |
提案時の予算 | 14,577 | ー |
不用額 | 12,574 | 86% |
不要が生じた理由を要約すると、「想定していたレベル4を取得できなかったから機体も購入できず、期待してた利用実績も出なかったため」という事になります。
当時の議事録
ハードルとされたレベル4の取得
2024年の3月議会で「レベル4を見込んで」再び予算計上されたドローン事業ですが、レベル4の取得は2025年2月と、年度のギリギリになりました。しかもこれは、処方薬の実証事業という立て付けであり、実運用ではありません。当初の予定とされた買物でのレベル4という記事は見当たりませんでした。
https://sora-iina.com/news/press/20250212_454.html
そうした事もあってか、当初予算で計上された金額に対しては、またしても大きな不要額が発生しました。
R6年分 | 予算額 | 不要率 |
当初予算 | 15,627 | |
不用額 | 14,045 | 90% |
そもそも、3月議会の委員会でも指摘しましたが、レベル4を取得できたからと言って、注文数が50倍にも増えるとは到底考えられません。
3月11日の議案質疑によれば、計画で1609人。65人が実績という事で、これまた大きな乖離が発生しています。
最初から利用の実数が伸びないだろうと予想されたため、2024年の3月議会で私は「ドローン事業を削る予算」の提案を行い討論がされました。
事業実施の是非に関しては、賛成派と反対派で、沢山の意見が飛び交いました。
結局、賛成多数で可決された訳ですが、これだけ議員間で真剣に議論したにも関わらず、肝心の予算が「やっぱり9割は使われなくて不要でした」ということ自体、何だったのかと感じてしまいます。折角事業の将来性を見込んで賛成した議員に対しても、失礼な事のように感じます。
こうした経緯を振り返ると、ドローン買物支援事業は、批判がありながらも2年連続で提案され、しかも2回連続で予算の8割以上が不要となる、五島市政においても珍しい予算のひっこめ方です。
これによって失われたお金と時間を検証してみます。
失われた「予算」と「時間」
未執行の1,300万円
R5年度の補正予算では14,57万円のうち、半分の 728万円が五島市の予算でした。このうちの86%が未執行なので、余った予算は大体628万円です。
R6年度の当初予算では1562万円のうち、781万円が五島市の予算でした。このうちの90%が未執行なので、余った予算は大体700万円です。
R5とR6の未執行予算(五島市手出し分)は1,328万円以上になります。
これは何を意味するのかと言うと、単年度で見ると本来別の予算に計上する事が可能であった700万円が使えなかった、という事です。例えば五島市は、R6の当初予算で「移動販売支援事業」に650万円の予算を計上していました。
私たちは議会を通じて、「本当に困っている人に予算を付けてください」と提案をしました。当時の市長の答弁として印象的だったのは、「買い物に必要な300円の船代くらいは自己負担」でお願いします、という冷徹なものでした。
もしもドローン事業が計上されていなければ、この「本来あるべき買い物支援」の予算を倍増する事が出来た訳であり、二次離島を含めてより多くの買い物難民に支援の手を差し伸べる事が出来たという事です。
議員と市職員の時間
失われた「時間」という意味では、議員や執行部に対しても大きな損失が発生したと考えています。
本来、議員は「予算の適正な執行」に向けて、可能な限り多くの予算をチェックします。しかしもちろん議員は人間であり、AIでは代替されていないため、時間に限りはあります。この2年間、ドローン買物支援事業を巡り、私を含めて何名もの議員が少なからぬ時間を割いてきました。
お金の問題にからめると、議員や職員の皆様の人件費も公金で賄われているので、寧ろこちらの方が大きかったのではないでしょうか。
ドローン買物支援事業は、当初予算に対する修正の提案だけでなく、一般質問にも取り上げられています。こうした議論の時間も本来であれば、前述のお金と同様に、「他の事に充てる事が可能な時間」です。
議員の仕事は、上程された予算をしっかりと審議する事です。
しかし今回は、上程されて審議された予算が未執行となりました。本来であれば、より多くの時間を別の市民サービスの向上に向けた審査・提案に費やす事が出来たという点では、議員と執行部の時間を消耗させた功罪は大きいのではないでしょうか。
悪く言えば、「やるやる詐欺」みたいなもんです。この件については、委員会でもしっかり取り上げていきたいと思います。