疑問に思う「五島市の小中学校統廃合」の推進

長崎新聞の記事の抜粋です。

長崎県五島市は22日、児童生徒数の減少に伴い、市立崎山小(40人)を福江小(422人)へ、大浜小(21人)を本山小(103人)へ、奥浦中(21人)と崎山中(24人)を福江中(420人)へ、それぞれ2024年4月に統合する方針を明らかにした。同日の定例市議会最終本会議で、野口市太郎市長が報告した。

https://nordot.app/978862108141715456?c=174761113988793844

今までの経緯と統廃合の理由

私は先日、大浜にて地元住民向けの説明会(第4回目)に参加して来ました。

その中での説明によると、「第1回~3回と説明会を重ねる中で、大浜地区に関しては、保護者の方から一定の理解は得られているため、統合を進めたい」と言う事でした。

その説明の中で、疑問に思う点が幾つかありましたので、紹介したいと思います。

五島市は全体的に人口減少しているので、公共施設管理計画では40年で40%を削減すると目標を掲げ施設の統廃合を進めています。

学校の統廃合は施設の統廃合とは違いますが、小規模校の生徒数が伸びる見込みは今の所ありません。

こうした中、五島市では小中学校の適正規模などに関する基本方針で統廃合の検討基準に当たるとして、今年に入って保護者らを対象にアンケートや懇談会を実施し、統合時期を提案してきました。

説明会での話では、五島市側の「出来るだけ統合を進めさせてもらいたい」という意向が強いように感じられました。

その理由として「複式学級の解消」や「一定以上の集団を維持する事」が挙げられました。

少人数は子供にデメリット?

大人数で学ぶ事のメリット・デメリットと同じく、少人数の教育によるメリット・デメリットもあります。

参考

https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/material/files/group/44/2022041408niigatakennmeritto.pdf

説明の中では「何としてもデメリットを解消させたい」という意向が述べられましたが、これは一面的な見方ではないでしょうか。

そもそも、少人数学級で育った生徒の社会性への悪影響に関する追跡調査や根拠などはあるのでしょうか。

適正な学校の規模は、保護者がお子さんの特性を踏まえて判断するのが理想であると思います。

統廃合に関しては、財政的な問題や、教員不足によるものではなく、あくまで生徒児童の教育環境のためという説明でしたので、やはりこのまま進めてよいのか、疑問です。

考え方としては、校区制度を見直し、保護者が児童生徒の特性にあった学校を選択できることを検討すべきではないでしょうか?

説明会でそのような質問した所、「人気の学校に集中する恐れもあるので検討していない」との回答でしたが、本当に検討する余地がないか、疑問です。

保護者の声は?

ここで一番大切なのは保護者の声・意向です。

現状では、奥浦小学校・盈進(えいしん)小が保留状態であるため、統合の検討対象として懇談会を開き、引き続き保護者らと協議する事となっています。

ですので、市全体では「統廃合ありき」ではないようです。

では、統廃合を進める根拠となる「一定の理解」とは何を意味するのでしょうか。

説明会で配られた資料によると、R6年に統廃合を望む声が一番多かった(43.8%)ですが、「R7年以降」を希望する声の方が数としては大きい(56.2%)ですし、そもそも「統合してほしくない」という項目が回答にない状態です。

教育委員会から頂いた「保護者の声」の中には、当然ながら統廃合を望まない声もありました。

私も実際に、何名かの保護者から直接話を聴いてみると、

出来る事ならば、統合してほしくない

という声も聞かれました。皆本音はそうだと思います。

市では「多数決で決めるような事は考えていない」との事でしたが、過去の説明会の中では、

「何となく反対しづらく、統廃合が決定事項であるかのような雰囲気」

の中で、R6年という統廃合時期が決まってしまったのではないでしょうか。

地域活力の衰退

説明会の中では、

地域よりも生徒児童の将来が大事

という感じの話でした。確かにその通りかもしれません。

しかしそうなると、中々保護者以外の地域住民は声をあげずらいように感じます。

五島市では合併以降、福江以外の地区でも小中学校の統廃合を推進してきました。

そうした地域では子供の声が聞こえなくなり、今回の統廃合の場合でも地域活力の衰退は避けられないでしょう。

移住推進との整合性

さらに、今五島市は「最重要課題」として人口減少対策を推進しています。

都会で様々なトラブルを抱えていたり、少人数の中でのんびりと子育てをしたいニーズは今後も大きいのではないでしょうか。

実際に、五島市では離島留学制度で島外からの生徒の受入れも行っています。

朝ドラの「舞い上がれ!」では、五島が悩みを抱えるお子さんを受け入れる場所として描かれています。

実際、統廃合の検討対象となっている移住者の保護者に話を聴いたところ、

学校が統合になったら、ここに住む意味が薄れるので、引っ越す

という声も聴かれました。

宝島社の公表するランキングによると、五島市は

■子育て世代が住みたいまち 7位(123自治体中)

となっており、中心部以外の学校が統廃合する事は、子育て世帯の移住推進にとってマイナスではないでしょうか。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000189.000032871.html

そもそも、生徒数の減少が根本的な問題であるならば、郡部の空き家を改修してファミリー層に安く提供するなど、「福江以外の学校に優先的に移住推進をする」政策も取るべきではないでしょうか。

まとめ

現在五島市が推進する統廃合について、以下の点が気がかりです。

  • 統廃合の理由とされる「少人数学級のデメリット」は保護者と生徒が決める事では?
  • 財政的な問題や教員数など、現状の学校運営に支障がないならば、統廃合をR6に急がなくても良いのでは?
  • 説明会における「一定の理解」は、「統合に反対しづらい雰囲気」の中で何となく決まった事なのでは?
  • 福江地区への学校の一極集中は、市の人口減少対策にとってマイナスになるのでは?

私自身の意見としては、

  1. 保護者が学校を選択できる在り方(自由校区)を検討する
  2. 運営に支障が生じない限り、現状の学校の選択肢は残す
  3. 移住推進は福江中心部以外にインセンティブを設ける

事が理想ではないかと思います。

ただこの問題は、保護者の意見が最優先されるべきだと思いますので、ご意見がありましたらぜひお知らせ頂ければと思います。