こちらの記事の続きです。
観光客に1億円を配る事業を含む予算案が、3月24日の本会議で審議されます。
私は修正減額の立場ですので、理由を紹介します。
当初予算に対する反対理由を述べさせていだたきます。今回の予算に反対する理由は、新型コロナ交付金を財源とする観光促進事業、1億840万円の予算が含まれているからです。本事業が含まれていなければ、全体の予算には賛成の立場ですので、修正の動議を提出させていただきます。
事業の説明
予算書関係説明資料の3ページになります。“今だ!!五島へ行こう!!”旅キャンペーン事業として、1億840万円が充てられます。
説明によると、この事業は、交通事業者及びOTA(インターネット上だけで取引を行う旅行会社)を介した2名以上の宿泊及び旅行商品に対して、1人1泊あたり代金の50%(最大5,000円、2連泊上限)を助成するなど、観光客誘致及び市内経済の活性化に資する取組を推進します、とされています。簡単に言えば、2万人の観光客に5千円、総額1億円をばら撒く事業です。
本事業に充てられる財源は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金であり、総務省が示している情報によると、この財源は「コロナ対応のための取組である限り、原則、地方公共団体が自由にお使いいただくことができます。」と述べられています。
本予算案を修正しようとする理由は、以下の4点によるものであります。
1.五島市全体への経済効果
1つ目は、本事業による経済効果が、五島市全体に行きわたらない点です。「議員必携」に書かれている文章を抜粋いたします。「予算は、住民の生活を左右し、その福祉のいかんを決するものであるから、編成に当たる首長も、それを審議する議会も、あくまでも、住民全体の福祉を念頭に置いて考えるべきで、いやしくも一部の住民の利益のために奉仕するような事があってはならない」と書かれています。
いわゆる観光業は「すそ野が広い」と言われていますが、本当でしょうか?
H27年の国勢調査のデータによると、五島市内における卸売業・小売業、宿泊業、飲食サービス業、という、いわゆる観光関連の従事者は4148人であり、就業者数全体の25.5%です。これは直近のデータではないため、推計値となりますが、五島市には観光関連以外にも様々な業種があり、その7割以上はいわゆる観光業ではありません。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s007/040/010/020/150/sangyou.pdf
2. 観光事業者全体への経済効果
二つ目は、本事業による経済効果が、観光に携わる事業者全体に行きわたらない点です。例えば奈留島では、世界遺産を訪れる観光客の多くが、島を巡らずに世界遺産の教会だけを巡って帰ります。久賀島では、1億円をかけて整備された施設が有効に活用されておらず、そもそも商店街やお店が少ないため、観光客がお金を使う場所が少ないです。こうした状況の中では、幾ら観光客を誘致したとしても、世界遺産を含む二次離島の活性化は見込めません。
さらに、本事業で潤うのは福江の中心部の大型事業者だけです。その理由は、本事業の対象となるのがOTAを介した事業者だけだからです。長崎県のふるさと深呼吸事業では、OTAに限定せず、直接予約の場合においてもクーポンが受けられます。中小・個人経営の宿にはOTA登録をしていない事業者も少なくなく、その恩恵が受けられません。さらに、仮に観光消費が伸びてお金が落ちるとしても、そこで働く従業員に対する賃上げは、すぐには及ばないと推察されます。
3.国・県の予算と重複している
3つ目は、同じような予算がすでに実施・検討されている点です。既に長崎県では、県民を対象とした観光促進事業として、第2弾 ふるさとで“心呼吸”の旅キャンペーンを開始しています。これは、4,000円以上(税込)の宿泊料金及び旅行商品を対象に、宿泊及び旅行商品代の50%(最大5,000円/人(泊))を助成する事業です。
さらに国においても、従来のGoToトラベルを再開させる方向性で動いており、斎藤国土交通相は3月15日、都道府県が独自に実施する旅行割引「県民割」を地域ブロックに拡大するステップを踏んだあと、GoToトラベルを再開する方針を明らかにしました。県民割は4月より対象を拡大し、ゴールデンウィーク前の4月28日まで実施される見込みとされています。
さらに、既に市内の飲食店には、まん延防止措置に伴う協力金が支給されており、経済的な支援が必要なのは、その他の業種です。こうした状況から、五島市独自で行う必要性はないと考えられます。
4.市民生活の困窮
4つ目は、市民の生活が非常に厳しい点です。本議会の一般質問でも挙げられた通り、五島市は人口減少に伴い、慢性的な人手不足です。基幹産業である農業・漁業・林業だけでなく、医療介護福祉の分野も深刻な状況です。それに加え、長引くコロナの影響により、医療体制の脆弱性、離島独自の水際対策の重要性も明らかとなりました。更に昨今では、ウクライナ戦争による影響で資源価格の高騰、ガソリンをはじめとする燃油だけでなく、食糧費や日用品にまで、大きな影響を与えています。
昨日の日経新聞によると、電炉大手の東京製鉄は、ビルや住宅に使う鋼材を大幅値上げすると発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC226Z20S2A320C2000000/
政府も一昨日成立した当初予算の中で、原油や食料品の物価高騰対策に予備費を充てる方針との事です。こうした厳しい経済の状況を鑑みると、1億円という大金は、一部の事業者のみのために使うのではなく、市民全体の生活を安定させるために使うべきです。
議員各位におかれましては、どうか御理解を賜り、御賛同を賜りますように切にお願いを申し上げ、終わりといたします。