本当に正しく世論が反映されているの?
こうした疑問に答えます。
本記事を読むことで、世論調査の方法と抱える問題が分かると思います。
目次
そもそもどうやって算出?
全国民を対象に聞き取りをするのが理想ですが、コスト的に無理です。
世論調査では、サンプルを取り、母集団(日本人全体)を推定しています。この際に注意すべきなのは、
年齢・性別・地域に偏りが出ないようにすること
です。日本人全体の平均を取れるように、無作為に選ぶことが肝心となります。
朝日新聞の調査方法はこちら
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/3018
報道機関によって異なりますが、大体2000人くらいのサンプルを取っています。
問題点1. 統計手法
と思えるかもしれません。
しかし、「統計学的」には妥当であるとされています。
複雑な計算式
母集団の数から妥当なサンプル数を決定するために、以下の式が使われることが多いようです。
N = 全体の人数(母集団)
E = 許容できる誤差の範囲
P = 想定する調査結果=50(%)
(50%のときに最大のサンプル数となるため)
k = 信頼度係数=1.96
(通常,信頼度95%を基準とするため)
E = 2.5、P = 50、K=95%で計算すると、必要なサンプル数は1,537となります。
逆に、サンプル数が多ければ良いというものでもありません。
10万人でも1億人でも、上記式に当てはめれば必要なサンプル数は1537になります。
そもそも式は妥当?
私も大学で心理学を専攻していたため、様々な「統計法の式」を使ってきました。
しかし、そもそもですが、
「なぜこの式が正しいのか?」
については、あまり教わらなかった気がします。
私の勉強不足もありますが、上記式がなぜ正しいのか、分かる方がいたら教えてくださいm(__)m
代入している変数は妥当?
これについては、「許容できる範囲」とありますので、主観的な要素も入っています。
結果として
「よく分からない複雑な式に対して、よく分からない変数を代入した結果が正しい」と仮定すれば、
世論調査での「2000人規模の調査」は妥当な数であると言えます。
実際の投票先との乖離
算出式が妥当なのかどうかは、「答え合わせ」をすることが可能です。それは
- 「比例区の投票先」(実際の有権者のデータ=母集団)
- 「世論調査の支持政党」(サンプル抽出データ)
のズレを確認する事で分かります。2019年の参議院選挙を見てみると、
政党名 | 世論調査の支持率(「支持なし」を除く再集計値) | 得票率 | ズレ |
自民党 | 55% | 35.40% | 19.8% |
立憲民主 | 10% | 15.80% | -5.9% |
国民民主 | 3% | 7.00% | -4.4% |
公明党 | 8% | 13.10% | -5.2% |
共産党 | 5% | 9.00% | -4.2% |
日本維新の会 | 4% | 9.80% | -6.0% |
社民党 | 1% | 2.10% | -1.3% |
という形で、結果にかなりの差があります。
得票率
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/2019/00/hsm12.html
政党支持率
https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/archive/2019_06_3.html
問題点2. 若い世代の意見が反映されづらい
大手メディアはランダムに質問をするために、RDD法という手法を使っていますが、微妙に算出方法が異なります。
しかしこれは、従来から使われている固定電話しか対象とせず、最近普及しているIP電話には対応していません。
つまり、固定電話を持たない若い世代に対する質問は、少なくなる傾向にあります。
参考:日本における世論調査の信頼性と妥当性の統計学的検証
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yoron/115/0/115_KJ00009870470/_pdf/-char/ja
問題点3. メディアによって差がある
新聞を始めとするマスコミの調査では、世論調査の結果にズレが生じるケースがあります。
例えば内閣支持率にしても、A社とB社で数字が異なる事はよくある事です。
現に、「日本の世論調査における妥当性と信頼性に関する研究」によると、
世論調査の結果には、メディア間で統計的に有意な差がある
とも示されています。
https://jss-sociology.org/research/92/file/397.pdf
この原因としては
- 質問者への聴き方がマスコミ間で統一されていない
- メディア媒体によって有権者の反応が異なる
が考えられます。
本当に正しく世論が反映されているのか?
世論調査の問題点として
- 統計的な算出式の妥当性が示されていない
- 若い世代よりも高齢者を対象としがち
- マスコミ間の調査結果には差がある
がある事を踏まえると、
必ずしも正しとは言えないため、参考程度の情報にしておく
のが無難ではないでしょうか?