日本は人口減少しているって聞くけど、何が問題なの?
私たちの生活はどうなってしまうの?
こうした疑問に答えます。
教科書的に言うと、人口減少していく一番の問題点は、
高齢者が生活に困る事により、支える側(現役世代)も困る事
です。
この記事を読むと、「どういった順番でそれが発生するのか?」「それを回避するにはどうすれば良いか?」が分かります。
目次
日本の人口減少で生じる問題(負のスパイラル)
日本の社会では、以下の循環で社会全体が困るようになります。
- 全体の経済活動が減る
- 国と地方の税収が減る
- 社会保障費(年金・医療・介護福祉)が減る
- 現役世代の負担が増える(①に戻る)
1.経済活動が減る
人口が減れば、それだけ「モノを買う人」が少なくなります。
一人当たりが使うお金の量が変わらなければ、当然経済活動は縮小します。
2.税収が減る
経済活動が停滞すると、国や地方の税収(歳入)が減ります。
予算の配分が同じであると仮定した場合、「歳出に使えるお金の総量」も減ります。
3.社会保障(年金・医療・介護福祉)が減る
歳入が減ると、社会保障に使える費用が減ります。
それに加え、日本は高齢化に伴う社会保障費が年々増えるので、ダブルパンチです。
社会保障が減らされると、高齢者が生活に困るようになってしまいます。
4.現役世代の負担が増える
公助としての社会保障が減った場合、しわ寄せとして現役世代が高齢者を支える形(共助)となります。
親族の介護、地域の世話役、税負担の増加
という形で、現役世代の負担が益々大きくなってしまいます。
そして負担が大きくなった分、「1.経済活動が減る」に戻ります。
負のスパイラルを回避する方法
それでは次に、負のスパイラルを回避する方法です。
- (経済規模)デジタル空間へのシフト
- (税収)予算の組み換え
- (社会保障)技術革新による省力化
- (現役世代)個人で稼ぐ力を身につける
(経済規模)デジタル空間へのシフト
- 人口減少→経済規模の縮小
を避けるためには、デジタル空間での経済活動にシフトする方法が確実です。
デジタル空間の活用により、市場は1億(日本人)から60億(世界中)になるからです。
現状では、e-スポーツやエンタメ、ゲームやコンテンツ配信の市場が取り組みやすそうです。
「デジタル領域」に収入減を移動させれば、人口が減少していても稼ぐことが可能になります。
(税収)予算の組み換え
とはいえ、これから成長市場ではあるものの、全ての人が簡単に「デジタル空間」に移行できる訳ではありません。
「デジタル空間へのシフト」が社会全体で上手く行かなかった場合は、「予算の組み換え」が必要です。
例えば現状、防衛費に使われている予算を、社会保障費へと大胆に組み換えをします。
組み替える元は何の予算でも同じで、取捨選択の話となります。
日本の場合では、「高齢者がイキイキと暮らせる社会」を旗印にすれば、高齢者票で政治が動く可能性が高いです。
(社会保障)技術革新による省力化
とはいえ、将来の事を考えると、高齢者重視の「予算の組み換え」は難しいテーマかもしれません。
「予算の組み換え」が政治的に上手く行かなかった場合は、「技術革新による省力化」が必要です。
例えば現状、20万円の人件費で行っているサービスを、10万円のロボットで代替します。
そうする事により、社会全体の社会保障の負担を抑制する事が出来ます。
日本の場合、AIやロボットの活用による「イノベーション」を起こそうとしている企業が沢山存在します。
「社会保障の省力化」を旗印にすれば、技術革新で費用が抑制できる可能性が高いです。
(現役世代)「個人で稼ぐ力」を身につける
とはいえ、日本は世界も驚く規制大国であるため「技術革新」は難しいテーマかもしれません。
「技術革新」が民間で上手く行かなかった場合は、現役世代へのしわ寄せが避けられません。
公助も共助もない、「自己責任」の社会です。
そうなった時、現役世代としては「個人で稼ぐ力」が必要です。
例えば現状、手取りで20万貰っている給料を、副業の活用により+3万円を目指します。
そうする事により、生活に対する「高齢者を支えるコスト」のダメージを下げる事が出来ます。
日本の場合、手軽に始められる副業が増えているため、お小遣い稼ぎをするハードルは下がりつつあります。
「個人で稼ぐ力」を身に付ければ、「社会保障の財布へのダメージ」を緩和できる可能性が高いです。
それでは次に、人口減少対策の先進地ともいえる「五島市」の取り組みと、その中身について、紹介します。
人口減少対策=五島市の最重要課題
まずは「weekly落合」の紹介です(テーマは人口減少)。
https://newspicks.com/live-movie/420/
五島市はこの対策を最重要課題として位置付けています。
人口が減る→学校や集落がなくなる→何とか維持したい
という地方の実情は、嫌と言うほどよく分かります。
しかしここでは、あえて
人口減少対策が、本当に市役所の最重要課題なのか?
という点を考えてみます。
深刻なのは人口減より人口増
五島では昭和30年から人口流出に歯止めがかかっていませんが、逆のパターンとして、人口増が挙げられます。
日本を含む先進国は人口減少していますが、地球全体で見た時により深刻なのは、人口増です。
人口増に伴い、ミクロな視点では
- 人間同士の争いが頻発し、治安リスクが高まる
- 物資の交通量が増え、交通リスクが高まる
という点が挙げられ、マクロな視点では
- 消費エネルギー量が増加し、環境リスクが高まる
- 領土や資源を巡る問題で、政治リスクが高まる
という点が挙げられます。それに比べれば、人口減少は上記のようなリスクを減らす効果があるため、落合氏の言葉を借りれば
いかに軟着陸するか?
という点がテーマとなります。
失敗している「地方創生」
政府は2014年から地方創生の名のもとに、「東京一極集中」の是正を図っています。主な取り組みとして
- 地域おこし協力隊
- 地方拠点強化税制
- 政府関係機関の地方移転
等を行っています。ところが、マクロなトレンドとしての一極集中には、拍車がかかっている現状です。
https://nakanishidaisuke.com/2020/09/chihou-bunken/
「Weekly落合」の中にもありましたが、
- マクロな人口推計は概ね当たる
- 政策的な「人口のコントロール」は失敗する事例が多い
というのが、各国の歴史の示している事実です。
中国の一人っ子政策を見れば一目瞭然ですが、人口のコントロールは
- 個人の人権に抵触する
- 多様な生き方の実践を抑制
という側面があります。
自治体が出産のインセンティブを与える政策も、「子供を持ちたくない人」にとっては不公平に見えるはずです。
市町村の人口争い競争
現在、五島市を始めとする地方自治体は、「まち・ひと・しごと総合戦略」の策定を求められ、人口ビジョンを定めています。
そのうえで、各市町村は定住人口を増やすため、「あの手この手」の対策を講じています。
五島市も様々な移住支援制度を設けていますが、五島市の人口が増えるという事は、どこかの自治体の人口が減っているという事です。
日本全体で見ればゼロサムで、ただ人の移動が起きているだけです。
地方の自治体は、乏しい財政の中で過度な競争を強いられ、ふるさと納税のように「仁義なき戦い」へと発展する恐れがあります。
地方自治体が考えるべきことは?
日本全体で言えば、実質的な人口減少を海外からの労働力に依存して経済を回しているので、経済的な影響はいくぶん緩和されています。
その一方、地方では独自の「人口増加政策」を行っているため、不毛な身の削り合いが起きています。
地方自治体を取り巻く環境をまとめると、
- マクロで見れば、人口減少は避けられない
- ミクロな人口政策は「奪い合い」に過ぎず、マクロで見ればゼロサム
- 「現在の暮らし」をどう維持するかが問題
ここで大切な知見は、
政策的な人口政策は上手く機能しない場合が多い
という事です。それだけでなく、個人の生き方を制限する可能性も高まります。
人口問題を考える上では「適正人口」という言葉が使われますが、適正人口は、建物の収容力で変わります。
例えば、五島市の適正人口を10万としても、大型のマンション群が立てば、エネルギーを含めた生活様式も変わるので、意味がありません。
これからの自治体が「考えるべきポイント」と、現在の五島市がどれくらいそれを考えているか、点数をつけてみます。
- 限界集落の生活をいかに支援するか?(70点)
- 遊休資産をどのように活用するか?(30点)
- 次世代社会での「良い暮らし」とは何か?(0点)
エネルギー問題やゴミ問題・環境問題は、一つの自治体だけで解決できるものではありません。
こうした「考えるべきこと」の下地として、
同じ課題を抱える自治体や国と、いかに協力関係を築くか?
という体制づくりが必要になります。
人口減少社会が避けられないマクロ環境で一番考えてはいけないのは、
- どうやって市の人口を「他の市町村」から奪うか?
という部分です。五島市はこの部分が弱く、競争的に人口誘致政策を行っています。
個人にできる事
ここまで文章を読んでくれて、ありがとうございます。
人口減少により、高齢者世帯と現役世代、どちらも負のスパイラルに陥る可能性が高い事を紹介しました。
これを回避するための方法としては
- 経済活動がネット空間へのシフトする事(税収が人口に依存しない)
- 政治が予算の組み換えをする事(社会保障の歳出が増える)
- 社会が技術革新によって変わる事(社会保障の経費が減る)
があります。
しかし、どれも当てにすることは難しいかもしれません。
そうなった時、個人として出来る事は「稼ぐ力」を地道に磨く事ではないでしょうか。