立憲民主党
立憲民主党は20日、党経済政策調査会で議論を進めてきた経済政策「ボトムアップ経済ビジョン」を発表しました。
本日はその中身の検証です。
まずは抜粋です。
https://cdp-japan.jp/news/20190620_1847
枝野幸男代表は、国会内で記者会見を開き、「大きな方向性として、これまでの政策との違いは、賃金・所得をアップさせ、そこから消費を拡大させていく。
この流れを作っていかない限りは経済の安定的な成長は実現できない。まず上げるべきは賃金であることを明確に打ち出している。
それでは、中身についてです。
賃金・所得を上げるために
(1)賃金を上げて、GDPの6割を占める家計消費を回復する
(2)人間らしい働き方(可処分所得・可処分時間の十分な確保)を確立して家計消費を拡大する
(3)公正な税制改革であらゆる人々の「健康で文化的な最低限度の生活」の所得を確保して家計消費を安定化する
(4)事業所得を増加させ、賃金アップと設備投資を誘発する
こうした「家計の」
- 使えるお金の総量を増やし
- お金を使う時間を増やし
- 不安を払拭(税制改正)
する事により、家計の消費増を見込んでいます。最低賃金については、
政府主導で5年以内に最低賃金 1300 円を目指す
としています。
共産党やれいわ新選組も、公約の中で「賃金のアップ」を謳っていますが、問題はその増加分を誰が負担するかです。
国の関与が少ない事業所任せ(共産党案)では、韓国と同じ結末が予想され、国の関与が大きい(れいわ新選組案)場合は、労働市場での混乱が予想されます。
立件民主党の発表用資料によると、「中小規模企業への大胆な支援」とありますから、「国が多くの負担をする」と予想されます。
国の関与が大きくなると、実質的には「就労という名のベーシックインカム」になり、不正な事業所も続発しそうです。
いっその事、労働に依存しないベーシックインカムの議論を進めた方が良さそうです。
人間らしい働き方?
HPの情報によると、
- 時間外労働の実効規制
- 有給休暇取得義務と育児休暇の拡充
- 保育の不安解消等
を通じて、「人間らしい働き方」を目指すとしています。
しかし、これは「人間が働くこと」を前提とした議論です。
「働く時間を減らす方向性」は正しいですが、「働くことに縛られている」点では、将来的に疑問です。
AIやロボットの普及が進んだ10年後、20年後の将来を考えた時、その前提は崩れている可能性が高いからです。
成長力を強化するために
次に、成長力の強化に関する4つの項目ですが、
そもそも「成長力」とは何でしょうか?
1人当たりの実質賃金?
日本のGDP?
その辺りの主語が今一つ分かりませんが、一つ一つ見ていきます。
(5)一人ひとりの持つ力を引き出すことでイノベーティブな(創造力ある)働き手と企業を増やし、賃金と成長の源泉となる労働生産性を向上する
労働生産性が向上すると、究極的には人手は不要になるので、賃金は減る方向性になります。
(6)原発ゼロと分散ネットワーク型社会の構築によって「ヒト・モノ・カネ」を地域で循環させる
経済を地域で循環させるという事は、分散型の社会を目指す方向性です。その場合、成長の主語は「地域単位」という事になりそうです。
(7)人口減少時代に適応した都市・インフラ・資産を形成して、地域経済と住民の暮らしを支える
広域行政を担う市町村・県としては必要な発想ですが、これを国が主導して行う場合、「成長を目指す」という枠組みからは外れた議論になりそうです。
(8)日本と相手国の双方にとって持続可能な社会づくりに資する視点で、公正な国際通商関係を発展させる
言っていることは綺麗ごとですが、あまりに具体性のない提言ではないでしょうか。具体的な国名を挙げて、どのような関係性を結ぶのか、示した方が良さそうです。
まとめ
ボトムアップ経済ビジョンは、共産党の公約に比べると、具体性が高く、精緻に作られている印象でした。
ただ、前提として
- 人間が働き続ける事
に捕らわれているため、経済政策としては実利よりも混乱をもたらす可能性が高いように感じました。立件民主党の新しいHP「令和デモクラシー」のサイトでは、
新しい時代にこれまでの「普通」は通用しない
古い政治ではそのリアルに追いつけない
日本には大きなパラダイムシフトが必要だ
と記載がありましたが、政策を見る限りでは、そこまで大きなパラダイムシフトを感じませんでした。それに加え、
- 分散化された「地域」と「国」との関係性が不明確
- 「成長の主語」と「社会保障」との関連性が不透明
- 国際通商を巡る自民党方針との違いが不明確
な印象でした。