市役所職員のお話
先日、市役所に出向に来ている方から聞いた話ですが、
『市役所がしっかりしないから、観光が盛り上がっていない!』
という市民の方からの批判はどうなんでしょうか?
という意見を聞きました。確かに、東京の○○区であったら、観光が盛り上がってなくても、行政の責任は問われませんよね。
にも関わらず、例えば五島では、
- 観光がダメなのは役所のせい!
- 商店街がダメなのは役所のせい!
- 経済が落ち込んでいるのは役所のせい!
というような形で、行政に対する(お門違いの)指摘をされる方も多いみたいです。
参考記事:五島市民への不満の話
そこで本日は、地方公共団体の役割ってそもそも何だっけ?
という問題を考えてみます。
役割①.市民の生活確保
ここでいう生活とは、「最低限度の社会インフラの維持」です。具体的に言うと、
- 上下水道の設備
- 道路と交通網の整備
- 電気やガスの供給網の整備
などです。エネルギー分野は自由化されていますが、交通網は未だに役所の関与が大きい分野です。
非常時の対策としては「防災・警備」がありますが、これは役所の指揮系統から外れています。
この分野では働いている職員の数は、全体の割合としては極めて少数です。
役割②.市民サービスの提供
市民サービスと言えば様々ですが、要は「生活確保」以外の部分です。これが地方公共団体が一番リソース(職員とお金)を割いている部分です。例えば
- 行政事務の受付や手続き
- 市民向けイベントの企画や提供
- 国の制度に上乗せした「独自」サービス
五島市でいえば、「今の住民」よりは、短期滞在者住宅の促進など、「移住者」に向けた行政サービスに力を入れています。
役割➂. 産業振興?地域活性化?
地方公共団体は、いわば「国の出先機関」であり、多額の予算が国や県からも支給されています。
そうした中で、多くの地方公共団体は、目立った産業や雇用がないので、財政的には「国のお荷物」となります。
「地方創生」という国の号令は、そうした国の負担を軽減し、首都圏への一極集中を避けるという狙いがあります。
もちろん地方の方でも、「健全な財政規律の運営」が求められていて、財政の黒字化に向けて削れる部分は削っています。
ただ、地方公共団体で働く職員の立場で見た場合、国からお金がもらえる以上、「ニート」状態です。
例えていうなら、親が「働いて稼ぎなさい!」と言われて頑張るそぶりを見せながら、実は外でだらだらしても生きていけます。そして内心では、
(どうせお金貰えるでしょ・・・)
という形で、夢にも地方公共団体が財政破綻して潰れる、という風には考えてないようにも見えます。
そうなったとき、職員からすれば、「市民の生活確保」と「市民サービス」以上の役割を提供するインセンティブがありません。
そのため、あくまで
- 産業振興の主役は地元の「企業」であり
- 地域活性化の主役は地元の「市民団体」である
という形になります。
産業も活性化もない「地方」
ここで問題となるのは、企業による産業の勃興も、市民による活性化も起きず、衰退している地方で、
「誰が地元の活性化を旗振り役として担うのか?」
という問題です。この問題が、冒頭で紹介した
市役所が悪い!
の論理に繋がってきます。国、地方自治体、住民という立場で見た場合、選択肢としては以下の二つがあります。
ここで少し、日本全体を一つの会社として話を整理します。
①黒字部門の強化で赤字を補填
黒字部門とは、具体的に言うと税収が+になっている、日本の都市です。
この機能をますます高めて、赤字部門を補えるだけに育てるというのが一つの考え方です。
橋本徹氏の唱えていた「大阪都構想」は、この「成長エンジン」を東京だけではなく、大阪という大都市でも目指す、という構想でした。
②赤字部門を黒字化させる
ただ、安倍政権としては、現在赤字となっている地方を、黒字にさせようとしています。
この路線こそが、日本の財政収支を経営的な観点で見たときの「地方創生」です。
それが実現することにより、地方の票を得て政権基盤を強化することが出来ます。
そうした点を踏まえると、地方公共団体の役割自体、国の意向に沿ったものにならざるを得ません(親から仕送りを貰っているニート状態のため)。
そのため、今や地方公共団体は「住民サービス」を目指すだけでは不十分でして、「地方創生」という文脈の中では
「産業促進と地方の活性化を促す路線」
で主導的な役割を担うことこそが、教科書的に求められる地方公共団体の役割となります。