「弱者のブロック経済圏」が地方を救う?

  • 2018年11月28日
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五島の自然景観

最近、TVや雑誌で登場する機会の多い五島列島ですが、一言で言って「宝島のような島」です。

地元の人からすると、

何もない、不便な島だよー

という声が多いですが、都会の人からすると

便利さはある、景色も良い島

というイメージがあります。それに加え、個人事業主からしてみれば、たくさん「開拓」する余地があります。

開拓される沖縄

私は仕事柄、マリンスポーツやガイドの仕事を通じて「島外の旅行者」と関わる機会が多いです。

その中で、五島に魅了された観光客の方からは

五島は良い場所!沖縄みたいになってほしくないねー。

という声を聴きます。これの意味するところは、

観光地化されすぎて、「地元の良さ」が淘汰される

という部分だと思います。もっと具体的に言えば、

  • リゾート開発と大型ホテルの建設
  • 観光客の増加に伴う自然破壊や景観の悪化

などが挙げられます。

数値的な面では、沖縄の2018年10月の観光客数は、6.3%増84万人とされています(日経新聞)。

年間で比較すると、平成 29 年(暦年)の観光客数は、939 万 6,200 人で過去最高となっていますので、大体50倍くらいの差があります。

沖縄は潤っている?

沖縄では、「観光」が間違いなく主要産業となっています。

でも、沖縄は全体として潤っているのでしょうか?

琉球新報によると、沖縄の最低時給は2018年10月から

762円に 来月3日から25円増、全国最低脱す

とされています。このタイトルからもわかる通り、沖縄では賃金水準が全国最低という状況が続いていました。

単純な事実としては、

観光で潤う ≠ 庶民の生活水準の向上

です。世界遺産登録や政府の地方創生で五島が観光で潤った場合も、同じことが言えると思います。

グローバル経済圏の労働分配率

話が少しそれますが、先日の国会審議でこのような趣旨の話がありました。

(野党):アベノミクスで株価は上がっているけど、儲かっているのは大企業だけ。大企業(TOY〇TA)は「下請け叩き」を止めて、労働分配率の是正が必要。大企業の内部留保の課税も含めて検討すべき。

と指摘がありました。

これと同じような話が、五島が「沖縄のような再開発」をされた場合も起きると考えられます。

つまり、未開発の景観に手を回した大手資本のみに利益がもたらされ、最低時給は相変わらず低い水準で留められる、ということです。

島民からすると、

  • リゾート開発で沖縄と一緒になり、「独自性」が喪失
  • 手つかずだった自然が開発される
  • 賃金水準は大して上がらない

という、「一方的に奪われる感」が強い結果となります。いわゆる「ストロー効果」というやつですね。これがグローバル経済圏の実体です。

弱者のブロック経済圏

構造的に、島外資本が島の開発が出来るという以上、お金と資源がもたらす価値は「外側」に逃げていきます。

地方が「全体として」豊かになるための流れを作るためには、「ブロック経済」を敷いて、強制的に外側にお金が流れない仕組みを作ることが必要ではないでしょうか。

今の技術では、ブロックチェーン的な仕組みを導入して、自分たちだけの経済圏、というモノを作ってみるのはどうでしょうか。

例えば、島の家賃や島の食糧・島のインフラを利用するに必要なコストを「島内独自通貨」で支払い可能にするとか。

新しい時代の公共交通網(Maas)の在り方を考えれば、「経済のブロック化をデザインする」という仕事も生まれそうです。

従来通り、自由貿易・グローバリズムの土俵で戦っている以上、地方は資金力で「外のパワー」に劣ります。ホテルの開発も土地の改良も、お金の勝負では勝てません。

そのため、いつまでたっても「搾取される」という構造から抜け出せません。

地方がこのまま黙っていれば、ただ衰退していくだけですが、もうひと頑張りするのであれば、「沖縄路線」は避けるべきです。

なぜなら、それは「島の経済の内側」を刺激する方針ではないからです。

それよりは、ブロック経済圏を構築し、「島の内側」でお金の流れを作ることの方が、全体としての生活水準やサービスの質が向上する気がします。