震災後の電力改革
政府は2015年から「電力改革」を行っていて、3つの目標を掲げています。
- 安定供給を確保する
- 電気料金を最大限抑制する
- 需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する
そのため、いわゆる「大手10電力会社」で独占されていた
- 発電
- 送電
- 小売
を機能分離して、発電と小売を行う事業者の新規参入を促す狙いです。スケジュールは以下の通りです。
安定供給?電気料金の抑制??
大手10社による独占を解消し、新規参入を促すことで、目的の「3」に掲げた
「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する」
は確かに実現できます。
しかし、他の2つの目的をよく考えてみると、
- 安定供給を確保する
- 電気料金を最大限抑制する
達成されるか非常に怪しいです。
と言うもの、市場競争が激化することにより、
- 大手発電部門の採算が悪化し、安定供給が怪しくなる
- 再生エネの促進起爆剤としてのFITで電気料金が高くなる
という「本来の目的とは逆の現象」が、今現在も起きているからです。
例えば九州電力では、原発を動かせずに採算がドンドン悪くなっています。
https://nakanishidaisuke.com/2018/03/26/if-kyuden/
更に私たちの支払う電気料金は、FIT制度の賦課金により、ドンドン高くなっています。
https://nakanishidaisuke.com/2018/03/02/fit-germany/
大手電力の発電部門は大丈夫?
2020年には、改革の最終段階として「発想電分離」が行われます。例えば「九州電力」という一つの会社が「九州電力発電」と「九州電力送電」という2つの会社に分離されるイメージですね。
これは極端に言えば、
「大手会社の発電部門」が潰れても送電網は残り、足りない電力は他の(新規参入した)会社が作るから大丈夫
という状態を作り上げることです。
しかし一方で、政府は2030年のエネルギーバランスの目標として
原発を20%程度の割合で稼動
させようとしています。再生可能エネがベースロード電源になりえないことを考えれば、当然のことですが。
問題は、政府目標に掲げた「原発発電」をできる事業者が
「大手会社の発電部門」
しか存在しないことです。
市場原理を導入し保護政策も推進する矛盾
政府の本音としては、エネルギー目標に掲げた通り、
「大手10社の発電部門(原発推進)を残しつつも、大手以外の再生可能エネを増やしたい(20%程度)」
というものです。
つまり、大手10社は潰れては困る(Too Big To fail)わけです。そのため、
- 「淘汰を促す市場原理」を導入し電力改革を進める一方で
- 「既存の原発産業を保護する」エネルギー目標の推進
という、矛盾した政策を取る以外にありません。
「国策(=エネルギー目標)」として、原発を潰さない方針が示されている以上、大手10社の発電部門は東京電力と同じように、
実質的には「国有化」されている(=潰されない)
と考えてよいでしょう。