過疎の先進地・五島
人口減少が全国よりも著しく早いペースで進む五島では、「人口減少対策」が急務の政策として掲げられています。
- 移住を促進するために空き家に補助を出したり
- 雇用を拡大するために国境離島新法を全国に先駆けて始めたり
- 観光客を増やすために世界遺産登録のPRを頑張ったり
とにかくもう、あの手この手で「島の活性化」に向けて頑張っている感じです。
財政的には大丈夫なの?
という心配も一方ではあります。
でも突き詰めて考えると、「財政問題」は「爆弾ゲーム」みたいなものです。
それは「いつかは解決しなければいけない」ことですが、
「今はまだ解決しなくてもよい」という問題です。
構造的に「先送りが可能」であるため、市長の任期が4年毎であり、年金受給者の大半が半世紀以内にこの世を去るということを考えれば、
「身を切ってまでやらなくてもいっか。」
というモチベーションになります。一方で、「島の活性化」は景気刺激対策として封じ手をバンバン使ってくる国のリーダーと同じようなスンタンスですね。
行政と住民の温度差
2018年になって、市長からこんな挨拶(号令?)がありました。
五島市の明るい未来のためには、地域、市民、行政、関係団体が一丸となり、国境離島新法を最大限に活用した取り組みなどをさらに加速させていくことが必要です。
引き続き「結集‼みんなの力で五島を豊かに」を合言葉に、総力をあげて人口減少に挑みますので、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。
市長のメッセージはこちら。
何だか離島版の「国家総動員法」的なメッセージですね。
でも、住民の声はどうなんでしょうか?
私は10ヶ月間五島市に在住していますが、少なくとも50件くらいの居酒屋やカフェ・飲食店に足を運んでます。
そこでは都会以上に「住民のリアルな話」を聴くことができます。
五島市のブラックな就職事情とかについてもです。
そうした中で感じるのは、
「人口構成の半分以上を占める高齢者と行政の温度差」
です。高齢者でお店を営んでいる方の中には、
「人口なんて、増えんでよかよ。」
と言っている人も少なくありません。ヨソ者が増えると言うこと自体によく思っていない人もいますし、特筆すべきは、
「その数は決して少なくはない。」
と言うことです。実際に、老舗の宿泊施設は
「観光客が増えたら困る」という感じでした。
後継者不足の問題を抱える民宿の実態についてはこちら。
先日は壱岐に海ゴミ交流事業に行きましたが、ある女性の方から、
「あなたのような人はこんな所でくすぶっていちゃダメよ。悪いことは言わないから、都会で頑張りなさい。」
と言われました。その方は、島の未来と私の将来を思って、親切心からそのような助言をくれたのですが、内心では少し寂しい想いがしました。
挙国島一致体制?
つまり何がいいたいのかと言うと、市長は
「皆で島を盛り上げよう」
と言ってますが、住民(特に高齢者層)の多くは、
「そげんこと、せんでよか。」(=そんなこと、しなくてよいですよ)
と思っている気がします。何でそうなのかと言うと、やっぱり行政の論理(人口維持できないと行政自体が存続し得ない)から考えると、いきなり
「明るい未来」
とか
「豊かな五島」
とか、ありきたりで使い古された美麗字句を並べられても、全くビジョンが描けないし、そもそも肉体的に限界、という問題があるからではないでしょうか?
「ばらかもん」に学べ
じゃあ解決策はどこにあるのでしょうか?
答えは身近なところにありました。
五島を舞台にしたほっこり漫画、「ばらかもん」。
この漫画の素晴らしいところは、基本的にゆるくてのんびりとしたトーンで田舎ライフが描かれているのですが、時に「ハッ」とするような名言が飛び出すところです。
15巻で、この問題への示唆が盛り込まれています。
「ばらかもん」を知らない方のために、話を簡単に紹介しますね。
離島暮らし(福江島)を始めた主人公に、都会の友人Aが『もういい加減、東京へ帰って来い』と説得しに来るシーンです。友人Aは、それでも都会に帰る踏ん切りのつかない主人公に対してため息をつきながら、こんな風にぼやきます。
「今まであいつ(主人公)とは、ずっと二人三脚で一緒に走ってきたと思っていたのになあ。。。(何でこんな田舎でくすぶってるんだよ)」
その様子を見たヒロイン(6歳)の女性が、友人Aに対して問いかけます。
「でもさー。何で一緒に走らなきゃ行けないの?
全然理解不能ww
だって一緒に走ったら、両方ともビリになっちゃうよね?」
確かにその通りですよね。更にヒロインは続けます。
「私だったら、先にゴールして、呼ぶよ。
『早く来い!』っちね。」
確かこんな感じだったと思います(細かい部分は違うかも)。
何が言いたいかわかりますか?
市長の掲げる
「皆でがんばろう!」
は、日本人的なスローガン(挙国一致=1億総活躍)で聞こえがいいのかも知れません(思考回路は戦争末期と同じ)が、
「結局みんなビリになる」
だけです。だって五島市の人口ピラミッドを見てくださいよ。
二人三脚どころか、騎馬戦で短距離走に望もうとしているようなものです。ぜったい早く走れませんって。
五島の活性化のためには、全く逆の発想が必要です。
足の速い個人が、「大金」若しくは「ルールを変える力」を手にして、島に「経済循環の種」と「外貨を呼び込む仕組み」を作った方が効果的です。
それが「ばらかもん」から学ぶ地方政治の秘訣ではないでしょうか。