楽しい楽しい卒業旅行
当時、大学の卒業を間近に控え、高校時代のサッカー部のメンバーと総勢6人でキャンピングカーの旅に出た。その目標は
「キャンピングカーで全国を周遊してみよう」
という壮大なプランだ。
(とは言っても北関東は攻めない予定だったが)
旅自体はとても楽しく、和気あいあいと運転交代をしながら順調に西に向かって進んでいた。
岐阜へ行き、名古屋へ行き、瀬戸大橋を渡り香川県あたりまで来た時だった。
ジャン負け運転選手権
6人のメンバーのうち、私ともう一人の参加者は
「運転が下手そうだから」
という理由でハンドルを持つことを免除されたのだが、他のメンバーについてはローテーションでハンドルを握っていた。
とある飲食店街での夕食時に、美味しそうな魚をいただきながら、皆で話をしていた。
「次の運転手はジャン負けで!」
そんな会話の流れとなり、私ともう一人を除く4人でじゃんけん大会が始まった。
運悪く負けてしまった人は、夕食時のビールを諦めて、食事だけ取ってその後の運転を任される流れとなった。
キャンピングカーの車内
キャンピングカーの車内は、はっきり言って超楽しい。
揺れも少なく快適で、身長の低い私は屋上で足を伸ばして眠ることができる。
運転手を除く残りのメンバーは、快適な後部座席でトランプをしたり、任天堂64のスマブラを楽しんだりしていた。
(日課のようにコントローラーを持参して、友人宅でスマブラをしていた中学時代が懐かしい)
声も外に漏れないものだから、後部座席は大いに盛り上がり、気がつけば次の目的地に着いている、というすごく愉快なものであった。
休憩地点では、示し合わせたかのように「漢気じゃんけん」が始まり、その結果に皆で一喜一憂する。
うん、やはり気心の知れた友達と旅行をするのは楽しい。
その時歴史が動いた
愛媛県の県道を運転していた時だったと思う。
その道路の山道は多少入り組んでいて、雨は降っていないのだけど路面は濡れている。
下りのカーブに差し掛かった時、運転手が多少大きくハンドルを切りすぎてしまったせいか、ハンドルを取られてしまった。
(あ、死んだかも)
そう思うくらいの激しい揺れが、右と左に1回ずつ。
不思議なことだけど、その瞬間の映像は今でも鮮明に、そしてゆっくりとしたイメージとして覚えている。
気がつくと私は後部座席の椅子に首を挟まれ、しっかり90度横たわった状態で
「イタタタ・・・」
と呻いていた。
しかも何やら焦げ臭い匂いもする。
(もしかしたら爆発するかも・・・)
他のメンバーは互いに声を掛け合い安否を確認し、急いでキャンピングカーから離脱した(幸いにして負傷者はいなかった)。
つい先ほどまで車内で盛り上がっていたその車は、見るも無残な姿で横たわりながら数十メートル移動した痕跡を路上に刻んでいた。
事故現場の先に佇む崖
事故があった現場の数十メートル先にはガードレールがあったのだが、その向こう側は切り立った崖になっていた。
私たちはそれを見て思わずゾッとした。
もし万が一、横転した場所がここだったら・・・
確実に助かる見込みがないであろう死の匂いが、その崖の下からは発せられていた。
それでも何とか家族に連絡をしたりレッカー車を呼び、その場はタクシーに乗せられて近くの温泉まで行った。
道後温泉に行って帰る
こうして急遽終わりを告げたキャンピングカーの旅ではあったのだが、最後は道後温泉に浸かり、夜行バスにて無事に帰ってくることができた。
事故は本当に思わぬところに転がっている。
それは決して、たまたまハンドルを握っていた運転手が悪いわけではなく、同乗者全員が浮かれて油断していた、ということであった。
まあ何にせよ、九死に一生を得たので私たちはラッキーだった。
(そう思わないではいられない程、崖のインパクトが大きかった)
それ以来、私はキャンピングカーには乗っていないのだが、キャンピングカーを見るたびに、あの事故をしみじみと思い出してしまう。
キャンピングカーの注意点
キャンピングカーで気心の知れた友達と旅をするのは楽しい。
が、乗り慣れない車であるため、やはり幾つかの注意点が必要だ(目を細めながら語る)。
- バランスを崩しやすいカーブは要注意
- 車高が高いから入れない場所がある
- 後部座席でハシャギ過ぎない
- 休憩と運転ローテーションを入念に
こういったことを考慮に入れて、ぜひ楽しい旅をしてほしい。
余談だが、長崎への移住希望者にはキャンピングカーで移住先を検討できる、というプランがあるらしい。
私は五島の視察の際に利用したかったのだが、
「(島までの)船の輸送費が高いので、お勧めしません」
と担当者に言われ、利用は断念した。
またいつか、キャンピングカーで全国を旅したいと思う今日この頃。