ネゴンボ駅の周辺は喧騒に満ちている
人の往来が激しく、スーツを着たサラリーマン達が足早に移動している。道路ではバスが所狭しと行き交っていて、クラクションの音はまるでBGMのように鳴り響いている。
ここには長くいれない
直感的にそう感じた。何はともあれ、キャンディーへの移動の前に、朝食を食べておこうと思い、近くにあるファストフード店に入った。
店員はにこやかに空いている席に水を置いて、座るように勧めてくれた。が、店の中にはハエが飛び交っていて、衛生的にかなり不安である。
水は口にせず、ショーケースにある質素なパンを一切れだけ注文することにしておく。バスか電車か、どっちの方がキャンディーに便利かと店員に聞いてみる。
「それならバスに乗りな。電車は全然こないから。」
ろくに下調べも計画もしていなかった私は、素直にその指示に従うことにした。定員は律儀に、周辺の地図を書いてバス停の場所を教えてくれた。
バス停はどこだ?
しかし実際に行ってみると、全然それらしき場所は見つからない。
仕方なく道路のおっさんに手当たり次第、バス停の場所を訪ねてみる。皆質問には答えてくれるが、
「あっち」
とか
「こっち」
とか、すごく大雑把な感じでしか教えてくれない。私はたらい回しにされながらも、ひとまずは言われた通りに歩いてみることにした。
本当に道を知ってるのか?
そう尋ねたくなるくらい、みなあっけらかんと答えてくれる。4回のたらい回しを経て、私はなんとか無事にバス停にたどり着くことができた。
あれもこれも新鮮なバス
キャンディ行きのバスに乗ってみると、様々な点で見慣れない光景が目に付いた。
まず、料金の支払いの仕組みがわからない。後払いかと思っていると、バスにかけ乗ってきた若者が、座っている人から次々にお金を徴収して回る。
客は行き先を告げて、金額を払う。が、当然ごまかそうと思えばいくらでもできてしまう。ここには暗黙のルールがあって、皆それを守っているのだろう。
クラクションが鳴り響く駅前の道路を、バスは巧みにくぐり抜けながら進んでいく。駅周辺では頻繁に止まることが多く、乗客に混じって妙な身なりのおっさんが乗ってくる。
おっさんは何の説明もなしに、おもむろに取り出した笛を吹き始める。まるで大道芸人のようだが、他の乗客はあまり迷惑っていう感じでもしない。見慣れた光景なのだろう。
おっさんは目をつぶり、牧歌的な笛の音を、街の騒音に負けじと奏でる。
一通りの演奏を終えると、乗客たちの間を、チップを求めて練り歩く。拍手も歓声もないバスの中で、小銭を差し出している人もいる。
「今日はこんなもんか・・・」
という表情を浮かべ、おっさんは渋々とバスを降りていった。そして彼とは入れ違いに、大きなバケットを持った青年が入ってきて、お菓子や水を販売して回り始める。何という自由さだろうか。
国民気質なのかもしれない
バスでの人々の振る舞いは、日本ではまずありえない光景である。公共の乗り物では、「迷惑をかけないこと」が暗黙のルールであり、そのあたりの常識がスリランカとは大きな違う。ここでは皆、
迷惑をかけながらも、許しあっている
バスに乗りながら、そんな国民性というか気質を感じた。