以下のシンポジウムに参加して来ました。
五島市HPより
五島市では、磯焼け対策のさらなる促進のため、本協議会を組織し、「五島市藻場を活用したカーボンニュートラル促進事業」として、藻場再生活動及び既存のカーボンクレジット認証制度を活用したクレジット販売などに取り組んでおります。この事業のシンポジウムを次のとおり開催いたします。
開催日時
令和8年2月18日 13時30分~16時00分
開催場所
福江総合福祉保健センター4階ホール(五島市三尾野1丁目7-1)
実施主体
五島市ブルーカーボン促進協議会
目次
五島市における磯焼け対策の取組について(一般社団法人磯根研究所 吉村代表理事)
全体のテーマ
磯焼け(海藻・藻場の衰退)対策の現状整理と、今後の現実的な回復目標・対策モデル、さらにブルーカーボン(藻場のCO₂吸収)やPDCA型の事業運営まで含めた説明。
1) 現状認識:磯焼けの原因構造が変わってきた
海藻が育つ条件(光・栄養塩・水温など)が良くても、海藻を食べる生物(魚類など)の影響が強いと藻場が成立しないという状況が増えている。
つまり、従来の「環境条件が整えば増える(ボトムアップ)」より、**食害側が最終形を決める(トップダウン)**の状態に移行してきている、という見立て。
2) 水温上昇と季節変化が食害を強め、藻場を壊しやすくしている
秋〜冬の水温低下が遅れる/寒い時期が短くなることで、魚の摂食活動が弱まる期間が減り、海藻側が回復する“猶予”が少なくなっている。
海藻には耐暑性の違いがあり、30℃超の時間が長いと壊れやすいタイプがある。
そのため、昔の藻場を「そのまま戻す」より、今の水温環境に適応した海藻で藻場を作るのが現実的、という方向性。
3) 実験・観察例:食害圧が海藻の伸び方を左右する
カゴ等で守ると海藻が伸びるが、周辺環境によっては季節で状況が変わる。
周囲に餌が多い時期は食害が分散し、守った株に集中しないが、餌が減る時期は一点に食害が集中して伸びが止まる、という構造が示唆される。
つまり、海藻の回復は「守ればOK」ではなく、食害の空間分布と季節変動を読んで設計する必要がある。
4) 回復の“質”の違い:回復力の強い海藻が残りやすい
食害下でも、ちぎられても再生しやすい(栄養繁殖など)回復力の強い海藻が残りやすい。
逆に、過去に優占していた海藻は再生力が弱く、条件が悪いと戻りにくい。
5) 対策の中心は「魚を入れない」「食害圧を下げる」「広く面でやる」
対策は大きく、
仕切りや網で魚が入らないようにする(物理的防除)
湾内などで魚を減らす/食害を弱める
必要なら食害魚そのものの個体数を減らす方向
へと進化してきている、という説明。
重要な注意点として、
小さく点でバラバラにやると、周囲から食害がすぐ入って元に戻りやすい
できるだけ“面”で集中して取り組む方が効果が残りやすい
という教訓が強調されている。
6) 成功事例と今後の見通し
先行地域(内湾モデル/外洋側モデルなど)の取り組みで、複数年連続で藻場が形成されている例がある。
ただし、仕切りの維持管理・面積拡大の難しさ、予算確保など課題も残る。
地元が撤退した場合などは、行政・関係団体が中心になり体制を組み直す必要がある、という話も含まれている。
7) ブルーカーボンの位置づけ
海藻藻場は**CO₂吸収(ブルーカーボン)**として国際的にも注目されている。
吸収量の算定方法は複数あり、係数の見直しなどで数字が変動しうるが、藻場の価値(クレジット等)を示す材料になり得る、という整理。
8) 国の方針:PDCAとモニタリング重視へ
水産庁の指針が更新され、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回すことが重視されるようになっている。
そのためには、海藻種の同定や調査方法などの基礎が必要で、図鑑や簡易資料の整備・提供も行っている、という締め。
一言でまとめると
水温上昇で“トップダウン(食害支配)型”に寄りつつあるため、今の環境に合う海藻を前提に、魚の侵入防止・食害圧低減を「面」で継続し、PDCAとモニタリングで改善しながら藻場回復を進めるべき、という内容です。
その後の発表
以下の発表がありました。
- 14時05分~14時30分:富江地区での改良型仕切り網の施工・製作について(富江漁業集落 馬場代表)
- 14時30分~15時00分:地域社会DX推進パッケージ事業について(株式会社 MizLinx)
上記二つの発表を通じて、現状ではDXで自動化・省力化できる部分はまだまだ小さく、網の整備や藻場の観察などでは、人力に頼らざるを得ない部分が大きいのかなと感じました。
が、技術導入も積極的に行いながら将来的には省力化も検討していくしかないですね。
- 15時10分~15時55分:ガンガゼ・イスズミを使用した料理の試食会
試食会では、非常に美味しく調理された食害魚を頂く事が出来ました。

市内で安定した量が取れるなら、給食や飲食店でも普及できれば良いな、と思います。

