【五島市副市長が突然解職】その背景と市政運営への影響は?

12月23日の五島市議会最終日において、市長から副市長の解職が説明されました。
選任からわずか数か月というタイミングでの決断に、議会内外で驚きと困惑の声が広がっています。
本記事では、議会報告を基に、市長の説明内容、議会の反応、そして今後懸念される問題点を整理します。


市長が語った5つの理由

① 五島市が直面する課題が極めて重大かつ多岐にわたっているため

市長は、現在の五島市が次のような重要課題を同時並行で抱えていることを前提にしています。

  • 人口減少対策という長期的かつ構造的課題

  • 国境離島関係制度の改正・延長への対応

  • 全天候型子どもの遊び場の施設整備

  • 畑地の基盤整備事業

  • 商店街の活性化など地域経済対策

これらは、いずれも市政の方向性を左右する重要政策であり、
意思決定の遅れや認識のずれが、市全体の不利益に直結する性質のものであると位置づけられています。


② 副市長の役割が「市長の意思を実現する補佐機関」であるため

市長は、副市長の法的役割について、

  • 市長を補佐する立場

  • 市長の命を受けて政策企画・事務執行を行う存在

  • 職員組織を監督し、市長の意思決定を行政に反映させる要職

である点を明確にしています。

この役割からすれば、副市長には
👉 市長の政策方針を正確に理解し、同じ方向を向いて実行すること
が強く求められる、という認識が前提となっています。


③ 市政を「一枚岩」で進める体制を構築する必要があると判断したため

市長は、

  • 「一枚岩となって諸課題に対応すること」

  • 「名実ともに一心同体である体制」

という表現を用い、市長と副市長の関係性そのものを解職判断の核心に据えています。

これは、

  • 個々の能力や人格の問題ではなく

  • 市政運営の体制・統治構造の問題

として解職を位置づけている点が特徴です。


④ 市政運営を迅速かつ強力に推進するための「体制上の判断」

市長は解職を、

  • 懲戒

  • 不祥事への対応

  • 職務怠慢への処分

としてではなく、

👉 「政策推進をより強力かつ迅速に行うための必要な措置」

と明確に位置づけています。

つまり、

  • 判断基準は「過去の評価」ではなく

  • 「これからの市政運営にとって最適な体制かどうか」

であり、未来志向の体制判断として説明されています。


⑤ 地方自治法に基づく市長の権限行使であるため

最終的に市長は、

  • 地方自治法第163条に基づく

  • 市長に認められた副市長解職権限の行使

であることを明示しています。

この点から、

  • 解職は法的に認められた正当な手続であり

  • 議会の同意を要しない範囲で行われた

という整理になります。


議会の反応|「理由が抽象的」「突然すぎる判断」

しかし、これではちょっと納得できない、というのが本音です。

議会側からは、解職という重大な判断に対し、次のような受け止めが見られました。

  • 選任から短期間(9か月)での解職であり、市民や議会への説明が十分とは言えない

  • 「一心同体」「一枚岩」といった表現が抽象的で、具体的に何が問題だったのかが分からない

  • 能力や職務遂行上の明確な瑕疵が示されておらず、人事判断の基準が見えにくい

特に、副市長という立場は市政の継続性・安定性を担保する存在であるだけに、
「説明不足のままの解職は、市政運営そのものへの不信につながりかねない」という懸念を抱いています。

突然の解職は問題とならないのか?

私も本日聞いた事でしたので、寝耳に水でした。

突然解職する事の問題点ですが、副市長の解職は地方自治法上、市長の権限に属しており、議会の同意を要しないため、法的には問題ありません。

副市長は市長を補佐し、その命を受けて事務を執行する立場である以上、市長との信頼関係が市政運営の前提とされているからです。

ただし、法的に適法であることと、市民や議会に対する説明が十分であるかどうかは、別の問題として検証されるべきです。


懸念される問題点|市政運営と信頼への影響

今回の副市長解職をめぐり、いくつかの問題点が浮かび上がります。

① 市政の安定性への影響

副市長は、市長を補佐し行政実務を統括する要職です。
短期間での解職は、職員組織や関係機関に動揺を与え、政策遂行のスピードや一貫性に影響を及ぼす可能性があります。

② 人事権行使の透明性

市長に人事権があるとはいえ、理由が抽象的なままでは、
「意見の違い=解職」という印象を与えかねません。
これは将来、副市長や幹部職員が萎縮し、健全な意見交換が損なわれる懸念にもつながります。

③ 市民への説明責任

副市長は市民の税金によって報酬が支払われる公職です。
その解職理由について、市民が納得できる説明がなされなければ、
市政全体への信頼低下は避けられません。

おわりに

市長が語る「明るく楽しい五島市を築きたい」という思い自体は、多くの市民が共有する願いです。
しかし、その実現のためには、トップの意思の強さと同時に、説明責任と合意形成の積み重ねが不可欠です。

自由闊達な議論が進むためには、「意見が言いやすい環境」こそが重要です。

今回の副市長解職が、市政を前に進めるための一手となるのか、
それとも新たな不信や不安、混乱を生む結果となるのか。

議会としても、市民の立場から引き続き注視し、必要な検証を行っていく必要があります。