美しい海と教会群で知られる長崎県・新上五島町。 観光地としての穏やかな顔を持つこの島には、日本のエネルギー安全保障を支える、もう一つの「巨大な顔」があります。
それが、世界でも珍しい洋上備蓄方式を採用している「上五島石油備蓄基地」です。
先日、念願叶ってこの施設を見学してきました。 単なる工場見学のつもりで訪れたのですが、昨今の国際情勢や国内の政治状況も相まって、日本の未来について深く考えさせられる非常に濃い時間となりました。
今回は、見学の様子と、そこで私が感じた「危機感」について共有したいと思います。
安全保障の最前線へ。緊張感漂う見学ツアー
まず、この施設は見学のハードルが少し高めです。 見学には5名以上の申し込みが必要となっており、今回は知人を集めてようやく実現しました。
申込はこちら。
https://www.kamigoto.co.jp/guide/index.html
基地内に入ると、職員の方から施設概要や備蓄の仕組みについて、非常に丁寧な講義を受けることができます。洋上に浮かぶ巨大な貯蔵船の仕組みは圧巻の技術力です。
しかし、ここで一つ重要なルールが。 「施設内の写真撮影は一切禁止」です。
ここは観光施設ではなく、国の重要インフラ。テロや防衛上の理由から、その姿をカメラに収めることは許されません。このルール一つとっても、ここが「日本の生命線」であることを痛感させられます。
「洋上の要塞」を見て感じた、空の守りへの不安
実際に施設を目の当たりにすると、そのスケールに圧倒されます。 しかし同時に、昨今の技術進展に伴う危うさもありました。
日本はエネルギー資源のほとんどを海外に依存しています。もしここが攻撃され、供給が断たれれば、私たちの生活は瞬く間に破綻します。 海上には防備体制が敷かれているのが見て取れました。しかし、昨今の戦争の形を変えている「ドローン」に対する防空体制はどうでしょうか。
広大な洋上に浮かぶタンクは、空からの攻撃に対し、あまりに無防備に見えました。 「もし今、ドローン飽和攻撃を受けたら?」 そんな想像をしてしまい、危機感を覚えずにはいられませんでした。
「高市総理」の政策と、高まる石油の重要性
視点を国の政策に移してみましょう。 先日、高市総理大臣より「再エネ規制」に関する政策が発表されました。 これまで推進一辺倒だった再生可能エネルギーに一定のブレーキがかかることで、相対的に「石油」というベースロード電源の重要性が再び増しています。
私たちは普段、ガソリンや電気を当たり前のように使っていますが、その源流は不安定な中東情勢に直結しています。 シーレーン(海上交通路)の安全確保は、もはや外交官や自衛隊だけの問題ではありません。 中東で何かが起きれば、五島のこの基地の意味が変わり、私たちの明日の生活が変わる。それくらい密接に繋がっている「自分事」なのです。
五島列島は「エネルギーの学校」
五島列島は、今回訪れた石油備蓄基地に加え、最先端の「浮体式洋上風力発電」の拠点でもあります。 「従来の化石燃料」と「次世代の再生可能エネルギー」。 この二つが共存する五島は、日本のエネルギー政策の縮図であり、未来を考えるための最高の教科書だと言えます。
美しい海を守ることと、国の安全を守ること。
観光ガイドの研修として訪れた上五島でしたが、帰りの船では、日本の未来について考えさせられました。
皆さんも五島を訪れる際は、ぜひ5人以上の仲間を集めて、この「要塞」を目撃してみてください。 きっと、ニュースの見方が変わるはずです。