議会最終日に提案されたこの議案に関する私なりの考えを述べておきたいと思います。簡単に言うと、
五島市が第一審で敗訴したので控訴する
という内容ですが、詳細は下記記事をご覧ください。
控訴にはメリットとデメリットがあります。
メリット:勝てば市の財政負担が減る。市の主張が認められる。
デメリット:負ければ市の財政負担が増える。市の主張を訴える事ができない。
控訴の是非に関する論点
論点としては
- 控訴した場合の財政負担をどう考えるか?
- 控訴しない場合の市のメンツをどう考えるか?
討論の中では柳田議員は賛成の立場で討論しましたが、「1」よりも「2」を重視した主張のように感じられました(あくまで個人的な意見です)。
「1」に関しては、当然「勝てる見込みはあるのか?」が論点となりますが、議案に対する質疑を通じては、「市は従来の主張が認められるように訴える」という部分しか明示されず、勝てるための戦略や見込みについては言及されませんでした。
もちろん、控訴は相手もいる事なので、こちらの手の内や作戦をばらすことはマイナスという考え方も理解できます。
ですが、一般論としては新たな証拠がない限り、第一審の決定を覆る確率は低く、私は裁判に関しては素人ですが、市が従来の主張を控訴で繰り返すだけでは、控訴が棄却されるか、負ける見込みの方が高いのではないかと考えました。総務企画部長も「新しい球はない」と認めていました。
市の財源を護らないのか?
もちろん、個人であれば、「主張が認められないから控訴する」という考え方は理解できますが、市の場合は市民の財産である「一般財源」の中から
- 弁護士費用、報酬
- 控訴のための手続き費用
- 控訴が長引く場合の延滞金
を支払う必要があるため、自主財源の乏しい五島市においては、貴重な財源を護る政治判断(=負け戦を避ける)が必要ではないかと思います。
もちろん、市としても「市の財源を護るために控訴する」という論理は成り立つかと思います。
ですが、市の説明や質疑に対する回答を聞いている限りでは、市の財源をリスクに晒す事に対する「申し訳なさ」みたいなものを感じらませんでした。これはあくまで私の個人的な感想ですが、
市のメンツを護る意識は強いが、貴重な財源を護る意識が弱いのでは?
と感じました。印象論ですので断定的な事は言えませんが、答弁を聞いていてそう感じました。
事案発生から数十年に渡り、本件に関して議員や市民に対する説明が不十分だったので、どうしても穿った見方をしてしまいます。
情報共有不足
そして控訴すべきか否か、判断する側の議員も、情報が足りずに十分な審議が尽くされていないように感じます。
私は当初、恥ずかしながら民事訴訟と刑事訴訟の控訴手続きの違いさえ知りませんでしたが、知り得る限りの情報はネットで漁り、司法統計の資料から「民事事件の控訴で一審が覆る可能性は低い」という事を知りました。
https://bizuben.com/kouso-bengo/#index_id3
そのため、勝算に関してズバリ質疑しましたが、
勝算の数値は持ち合わせていない
という答弁でした。本当に大丈夫なのでしょうか?
インプット情報や勉強が不十分であれば、当然ながら出てくる結論は異なってきます。市の説明だけを鵜呑みにしてしまっては、今回の予算に関する「無謀さやリスク」が分からないままだったと思います。
荒尾議員が質疑した通り、1日あたり7000円の支出が膨らみます。市のメンツを保つためであれば大した金額ではないかと思いますが、市の財政を護る観点に立てば、弁護士費用も含めて決して小さな金額ではありません。
本案については、
- 控訴に伴い、幾らの追加的な経費が生じたのか?
に関して、裁判の推移も見守りながら、しっかりとチェックしていきたいと思います。
言論の自由と「不穏当?」発言
私は討論の最終段階で
「控訴は(中略)市の財源を徒に浪費する、勝ち目の薄い賭博やギャンブルに近い行為」ではないかと問題提起しました。この事を巡って、議長から
太字部分が不適切な発言だから削除してくれないか?
という相談がありましたが、私は断りました。
確かに、受け取り方としては誤解を与えかねない表現であるとは思いますが、この比喩表現自体が議会の品位を貶めるものではなく、不適切とは考えにくい、と思います。
それに加えて、市に対する批判的な言論を封殺した場合、議員が本来持っている「言論の自由」が脅かされる恐れがあります。この辺りはバランスが難しい所ですね。
本会議中、議会運営委員会が急遽開催されて、この発言の扱いをどうするか、審議されました。
色々と指摘や意見がありましたが、
議長が発言を取り消す手続きをする
という事で決着しました。