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ふるさと住民登録制度とは?
「新しい地方経済・生活環境創生本部」で議論されているテーマの一つであり、地方の関係人口を増やす新たな仕組みであると言えます。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_chihousousei/index.html
提案された方からは、以下の通りの概要が示されています。
各地域が知恵を絞った取り組みを行う基盤として、居住地以外の市町村にふるさと住民としての登録ができる「ふるさと住民登録制度」を構築し「地域貢献型関係人口」を可視化するとともに、財政措置も併せて行うことによって取組を加速すべきである。
私はこうした形で関係人口を増やす事が、衰退の著しい地方の活性化に繋がる側面は大きいと思います。
https://www.sankei.com/article/20241201-S2NAG6IDDJB6LALKCBCN7DQXRM/
首相も施政方針演説で導入の実現に向けた検討を進める、としています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8be33b3b897b01cb9f1dfaeab8ce1b84d6a432d
実現した場合
地方自治体のメリット
この制度がうまく機能した場合、地方の経済の活性化が期待されます。
・地域の町づくりへの参加
・土地、風土、一次産業への関わり
・地域での事業の創業・継承
・地域内での子育て、自然教育
・副業、兼業などでの地域経済への貢献
・観光客等に対する対外的発信
・地域産品の消費、プロモーション
等が示されています。それに加え、自治体への財政措置として
・住民税の分割納税
・普通交付税の算定への組み込み
が示されています。
デメリット
この構想のデメリットは、ふるさと納税と同じで「都会の資源が地方に移転される」という事です。
地域に都会のリソース(人材・税収)が移った分だけ、都市の活力は減退が予想されます。
五島市で実現した場合
ふるさと住民登録者
五島市には「心のふるさと市民」という制度が存在し、五島市議会のR5年度の答弁では、
令和5年3月末現在、心のふるさと市民には、2万2,461名の方が御登録され、過去最高の人数
と紹介されています。この数の人たちがそのままふるさと住民に登録すれば、五島市の税収は倍増するのではないでしょうか。
しかしながら、五島市に限らず、分割された自治体の税収は減るというジレンマを抱えています。
その意味では、税収の移転については、ふるさと納税と同じく都市部からの反発も予想されます。
課題となるのは?
自治体負担の増加
受入側の地方自治体には以下の通り、「ふるさと住民」を受け入れるために様々な役割が期待されます。
・自治体の計画や事業に関する情報提供や意見聴取など行政上の意思形成プロセスへの参画
・二地域居住に適した居住環境の整備
・小学生の区域外就学制度の簡易化、ラーケーションの促進、保育園の域外受入の促進など二地域子育てにおける支援
・コワーキングスペースの整備など二地域居住に適した就労環境の整備
こうした行政コストは、一部で国が面倒を見ると予想されますが、相応の財政負担・人的負担となります。
地元住民との軋轢
特に居住環境の整備には多額の経費が予想されますが、
現在の五島市内においては、住宅が不足している状況であるため、「住民でない人のために」家を建てる事への反感は強いと考えられます。
市としても、所有する建物の数を減らす方針の為、新たな公共施設(住居)を建てるハードルは高いと言えるでしょう。
ただ、そこは廃校となった学校を上手に活用するなど、工夫して住居の問題をクリアできる可能性はあると言えそうです。
活動の可視化と評価
ふるさと住民には第二拠点での様々な活動が期待される訳ですが、その活動をどうやって可視化するかが課題となりそうです。
地方で活躍したい人も、自分の活動が公的に毎回公開されるのは心的ハードルも高いですし、評価を誰がどう行うのかも不明確です。
ふるさと納税と同様に、単に恩恵があるというだけでその自治体に「登録」し、期待される活動が伴わない「ただ乗り」も懸念されます。
可視化と評価が不十分な状態で行政負担が増えれば、上述の地域住民との軋轢は更に増大していくのではないかと思います。
五島市で生活する感覚として
現在でも、
ヨソモノに対する支援は手厚いが、地元住民に対する恩恵が少ない
という声を少なからず耳にします。ふるさと住民登録制度は、地方活性化の起爆剤となる可能性がある一方で、制度設計を誤ると、地域の閉鎖性に拍車をかけてしまう可能性もあります。
都市と地方にとってお互いにメリットがある制度設計が鍵になるかと思います。