【令和6年3月/五島市議会】施政方針1.五島の恵みを活かし、雇用を生み出す“しま”をつくる

五島市では、議事録が公表されるまでに数か月かかりますので、

2月26日に市長から公表された「施政方針」をご紹介します。

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本日ここに、令和6年3月五島市議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様方にはご健勝にてご出席を賜り、衷心より厚く御礼を申し上げます。

本定例会におきましては、令和6年度当初予算案をはじめ、条例案、その他重要案件のご審議をお願いするものでありますが、議案の説明に先立ち、私の所信と諸施策の概要を申し述べまして、議員皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

国内の経済は、コロナ禍を乗り越え、改善しつつあります。30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済には前向きな動きが見られる一方で、賃金上昇は物価上昇に追い付いておらず、個人消費や設備投資は依然として力強さを欠いております。

1月30日の通常国会において岸田首相は、あらゆる手を尽くし、物価高を上回る所得を実現すると表明し、賃金が上がることが当たり前という意識を社会全体に定着させると述べられました。また、人口減少問題を日本社会最大の戦略課題と位置付け、前例のない規模で子ども・子育て政策の抜本的な強化を図るとしております。

一方、県内の景気は、日銀長崎支店の発表によりますと、「個人消費は、一部に物価上昇の影響がみられるものの、緩やかに回復している。観光は回復が続いている。」となっております。

県の令和6年度当初予算編成の基本方針は、県民が将来への不安や憂いを払拭し、本県への誇りや未来への期待感を抱く旗印として策定を進めている「新しい長崎県づくりのビジョン」の実現に向けて、「こども」

「交流」「イノベーション」及び「食」の分野において、概ね10年後のありたい姿の実現に向けた施策を積極的に推進していくこととしております。

令和5年五島市の人口動態について、社会動態は、転入者が1,348人、転出者が1,323人で、転入者が転出者を25人上回り、3年ぶりに社会増を達成しました。

一方、自然動態は、出生者が166人、死亡者が725人で、559人の減となり、平成16年以降最高の減少数となっております。

これまでの取組により、社会動態は改善しておりますが、年々出生数は減少し、死亡者数は増加していることから、自然減対策を強化していく必要があります。

 

令和6年度当初予算は、「第2期五島市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略」が最終年度を迎えることから、その総仕上げに向けて重点施策に位置付けられた取組を推進するための予算としております。

挑み続ける“しま”として、社会動態増の継続、観光客の着実な回復の流れをつかみ、さらに前進させるための各種事業を実施します。

令和6年度は市制施行20周年を迎える節目の年となることから、市民の皆様と共にお祝いし、五島市の魅力を全国に発信し、未来に向けて飛躍する新たな出発点となるよう各種事業を展開してまいります。

それでは、令和6年度の施政方針について、五島市総合戦略の4つの基本目標に沿ってご説明いたします。

1五島の恵みを活かし、雇用を生み出す“しま”をつくる

【農林業の振興】

農業については、関係機関と一体となって、かんしょやカボチャなどの新たな産地づくりを進めるとともに、新規就農者育成総合対策事業などの制度を活用し、資金面や技術面の支援を行うなど、就農前から就農後のフォローアップまできめ細かな支援を行うことにより、人材の確保と育成に努めます。

また、国が策定した「みどりの食料システム戦略」に基づき、有機農業や化学肥料・化学農薬の低減に向けた取組に対する支援、ドローンによる農薬散布などのスマート農業を推進します。

 

肉用牛については、全国的な子牛価格の低迷が続いております。五島市では、国の支援事業である「和子牛生産者臨時経営支援事業」に加え、市独自の補完事業を行い、畜産農家を支援してまいりました。先般、国の支援事業の対象が、3月まで延長されたため、市の補完事業についても必要な措置を講じてまいります。

繁殖牛については、これまでの取組により、市内繁殖雌牛の増頭及び子牛生産ともに順調に進んでおりましたが、今後は厳しい状況が想定されます。子牛の生産基盤を維持・確保するため、国、県の動向に注視し、必要に応じた対策を講じてまいります。

肥育牛については、事業への参入を希望する農家に対し、畜産クラスター構築事業による施設整備の支援を行います。

養豚及び養鶏については、輸送コスト支援やブランド化推進等により支援を継続してまいります。

今後も、関係機関一体となり畜産振興、家畜市場の活性化及びブランド力向上を目指してまいります。

有害鳥獣対策については、農作物被害は年々減少しており、引き続き、猟友会、専門業者等による捕獲活動に加え、ICT機器の活用など新しい捕獲技術の研究や効果的な侵入防止柵整備を支援します。

また、捕獲従事者の確保対策として、狩猟免許取得に係る助成や報奨金の支給を継続し、捕獲者の負担軽減と効率化を図るため、地域での捕獲隊の結成を推進します。

捕獲されたシカ・イノシシについては、民間の食肉加工処理施設等と連携し、ジビエの消費拡大及び利活用に努めてまいります。

農地基盤整備については、県営事業により、久賀地区、岐宿町寺脇地区及び富江町日の出地区を継続して整備するほか、新規地区の採択に向け、福江の大津地区、富江町山下地区の調査を行うなど、農地の有効利用と農業経営の効率化を推進してまいります。

また、農業用ダムやため池など、老朽化した農業用施設の補修工事を行い、引き続き防災・減災に努めてまいります。

林業については、搬出間伐の促進に向け、作業の効率化を図るための高性能林業機械導入に係る支援や製材品・原木の島外出荷量増加に向けた陸上・海上輸送コストの支援に取り組みます。また、富江町繁敷地区の集積計画の策定と富江町松尾地区、山手地区の間伐を実施します。

林道については、引き続き林業専用道川原線・内闇線の整備を進めるとともに、玉之浦町幾久山地区の林道中須線の令和7年度工事着工に向けて計画を進めてまいります。また、既設作業道の補修を新たに支援します。

椿の振興については、来月9日から10日にかけて島根県松江市で開催される「第34回全国椿サミット松江大会」において、令和7年の五島大会開催が正式に決定される見込みです。

五島市が誇る地域資源「椿」を活用して、五島の魅力を全国に発信する絶好の機会でありますので、一人でも多くの方にご参加いただき、満足して帰っていただけるよう、椿関係団体、観光・商工関係団体等と連携し、大会本番に向けて万全の体制となるよう準備してまいります。

【水産業の振興】

水産業については、「浜の活力再生プラン」が令和6年度に更新時期を迎えることから、新たな再生プランを策定します。このプランに基づき漁業所得向上や水産関連施設の整備を支援し、漁業経営の安定化と生産基盤の強化を図るとともに、持続可能な水産業の確立を目指してまいります。

 

新規漁業就業者の確保については、実践研修などにより、後継者の増加や定着化を図っており、令和5年度は1月末現在で8人の研修生が新規就業しております。令和6年度の研修生は9人を計画しており、都市部における就業者フェアへの参加や地元漁家子弟に就業を促すことにより、研修生を確保してまいります。

また、独立・就業後においても漁具や燃油等の漁業経費を支援し、定着の促進に努めてまいります。

漁業集落の活性化については、特定有人国境離島漁村支援交付金を活用し、漁業者や水産関連事業所による地域資源を活用した取組と雇用の創出を支援します。

漁場の生産力の向上については、離島漁業再生支援交付金を活用し、ガンガゼ駆除などの磯焼け対策、クエ、アワビ、ヒラメ等の地域の環境に応じた種苗放流、市場ニーズが高いアオリイカに係る産卵床の設置など、実践的な取組を支援します。

 

磯焼け対策については、これまでの活動により、藻場が少しずつ再生しております。その藻場が蓄える二酸化炭素量については、五島市ブルーカーボン促進協議会において、ブルーカーボンクレジットの名称で今年度約12トンを公売しました。今後も、同協議会と連携し、これらの活動を各地区へ展開するとともに、回復した藻場が蓄える二酸化炭素量を公売し、活動の財源に充てることで、好循環を生み出してまいります。

そのほか、食害魚の駆除や有効活用などに向けた取組も検討してまいります。

マグロ養殖については、クロマグロの養殖生産量が日本一である長崎県において、五島市の生産量は県内生産量の約30パーセントを占めております。引き続き事業者、県、漁協等と連携しながら、養殖場における漁場環境の情報集積や赤潮対策学習会の実施など、生産基盤の強化に向けた取組を推進します。

また、養殖漁業におけるICT・IoT技術の活用を促進し、人手不足等の課題の解決を目指します。

燃油高騰対策については、漁業者の出漁機会の維持・拡大と漁業経営の安定化を図るため、引き続き国の漁業制度セーフティネット構築事業と併せ、燃油経費を支援します。

漁港の整備については、近年大型化する台風や高潮などによる自然災害を防止し、漁業者の就労環境の安全性、利便性の向上を図るため、国の補助制度を活用し、継続事業として椛島の伊福貴地区など3か所を、新規事業として三井楽町貝津地区など4か所を整備してまいります。

令和4年9月の台風11号により防波堤が被災した三井楽町嵯峨島地区については、復旧工事と災害防止のための改良工事を令和6年度末に完了する予定としております。

【物産・ブランドの振興】

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」や昨年7月から放送された

「ばらかもん」等のメディア効果により、全国的に五島の知名度が大きく向上しており、物産展やイベント等の開催回数も増加しております。この機会を活用し、令和6年度も引き続き、物産展や各種イベントへの参加、東京事務所・福岡事務所を中心とした営業活動を展開してまいります。また、大手スーパー、百貨店等と強い繋がりがある離島振興地方創生協会や五島市物産振興協会と連携し、これまでに確立した流通体制を活用しながら、取引機会の増加や販路の拡大、市内事業者の売上増加を図ってまいります。

【ふるさとづくり寄附金の活用】

令和5年度のふるさとづくり寄附金は、1月末現在で2万3,676件、約6億8,000万円となっており、令和4年度に比べ約3,900万円の増となっております。

ふるさとづくり寄附金は、市政運営の貴重な財源となるばかりでなく、返礼品を通して地場産業の活性化と知名度向上にもつながります。ふるさと納税制度の趣旨に則り、寄附していただいた方のご意向を踏まえ、ふるさと五島の振興に活用するとともに、引き続き魅力ある返礼品の充実を図ってまいります。

【企業誘致・地場産業の振興】

企業誘致については、長崎県産業振興財団と連携した企業訪問など、誘致に向けた活動を行っております。令和5年度からは五島市に関心・興味のある事業者の掘り起こしを中心とした事業を進めており、10社と面談するなど、新たなつながりができております。引き続き同事業を実施するとともに、企業の市内視察、誘致の実現に向けて取り組んでまいります。

地場産業の振興については、有人国境離島法による雇用機会拡充事業を活用し、平成29年度から令和4年度までの6年間で、231件の事業に支援し、586人の雇用を創出しました。令和5年度においても30件の事業で52人の雇用を生み出す予定であり、引き続き市内での創業・事業拡大を支援し、良質な雇用の創出に努めます。

同事業に不採択となった申請者に対しては、審査会での意見を踏まえたフォローアップ面談を行っており、事業内容の改善と再チャレンジを促すなど、事業の掘り起こしを行います。

38歳から53歳を対象とする就職氷河期世代の就労については、国の事業を活用し、実態調査等で把握した支援希望者への就労支援を行ってまいります。

人手不足対策について、昨年7月に、株式会社リクルートと「地域定着と雇用促進に関する協定」を締結しました。これまでWEB開催を含めてリクルート社によるセミナーを4回開催し、少しずつですが採用にもつながっております。同社のノウハウを活用し、人手不足に悩む市内事業者に対し採用業務のデジタル化を図るなど、地域の雇用を増やすための求人開拓と発信を進めてまいります。

令和3年に設立された「五島市地域づくり事業協同組合」は、参加組合員企業27社、派遣職員11人に規模拡大しており、正職員として雇用する派遣職員は、移住者の受け皿の一つにもなっております。市内外から人材を呼び込み、人手不足の解消につなげるため、同組合への支援を継続してまいります。

そのほか、新たに実施する市内事業所で行うインターンシップ参加者に対しての支援や、「五島市企業ガイドブック」を活用した大学・専門学校等への訪問、高校生を対象とした合同企業説明会の開催など、国、県と連携し、新卒者など若者をターゲットとした人材確保や情報の提供・発信に努めてまいります。

【再生可能エネルギー産業・次世代産業の創出】

昨年9月、脱炭素に向けた将来の展望をはじめ、重点推進プロジェクトや具体的な行動計画などを盛り込んだ、「五島市ゼロカーボンシティ計画」を公表しました。現在、家庭や事業所などの民生部門の電力消費に伴う二酸化炭素排出を2030年度(令和12年度)までに実質ゼロにする国の脱炭素先行地域の選定に向けて、提案内容の検討を進めております。第5回の募集締切が6月28日となっておりますので、採択されるよう準備を進めてまいります。

崎山沖の浮体式洋上風力発電事業については、製造中の浮体構造部に不具合が発生したことに伴い、発電事業者である五島フローティングウインドファーム合同会社が運転開始時期を令和8年1月とする公募占用計画の変更を国に申請し、昨年9月に認定を受けました。

運転の開始時期は2年遅れる見込みとなりますが、発電事業者からは当初計画のとおり、令和6年度から寄附の意向が示されております。浮体式洋上風力発電に係る地域や漁業との協調・共生のための基金条例を制定し、基金を活用した漁業振興策や環境保全、子ども達の人材育成などに活用してまいります。

また、海上に設置済みの風車3基のうち、1基を陸揚げして検査等を実施した結果、残り2基についても長期にわたる健全性を確保するため陸揚げし、再構築を実施するとのことです。なお、これによる運転開始時期の変更は無いと伺っております。

潮流発電については、1,000キロワット級発電機の設置及び電力系統に連系する国の実証運転が令和6年度に予定されております。

今後も、地域の方々や漁業関係者と連携しながら、円滑な実証事業の実施に向けて支援してまいります。

電気自動車の普及については、福江港ターミナルの急速充電器2基を撤去し、新たにキャッシュレス決済対応の1基を設置するほか、電気自動車の購入支援として、国の補助に加え、クリーンエネルギー利用促進事業費補助金を創設し促進を図ってまいります。