補正予算の資料を基に、解説してみます。
目次
知事選挙の公約
長崎県知事選挙に出馬された際の公約として、以下を掲げていました。
- 本県の地理的支障を乗り越えられる先進的な事例創出
- 他県に先駆けた各種行政事務の電子化やDX推進
- ICT活用人材としての民間人登用
- ICTリテラシーやプライバシー研修教育を通した人材育成
今回はこの公約に対して、補正予算でどの程度実現されたのか、検証していきます。
参考資料
県内中小企業DX促進事業費
県内企業のDX推進に向けた意識醸成を図るとともに、デジタル技術を活用した生産性向上や新たな付加価値を創出する取組を支援
・(新)県内企業のデジタル活用を加速させるためのプッシュ型のデジタル化推進活動
・(新)DX推進チームによる相談対応や計画策定支援
補正後予算額(63,360,000円)
所感:補助の要件が曖昧であるため、どんな事業でも「DXです」と言えてしまうような予感。DXという言葉がSDGsと同様にふわふわと独り歩きしている中、改めて長崎県の考えるDXのポリシーは何か、どういったDXであればOK/NGなのか、採択基準や基本方針を周知する事が大切。
サービス産業経営体質強化事業費
高成長への意欲と潜在力を持ち、地域経済への波及効果が期待できるサービス産業事業者に対し、DX等による県外需要獲得等を支援
・企業の計画策定、実践に対する伴走支援等 40,538
補正後予算額(156,637,000円)
所感:採択者側の長崎県が、地域経済への波及効果が期待できるサービス事業者を見極められるかどうかが疑問。そもそも企業が本当に「高成長への意欲と潜在力」を持っているならば、行政の支援がなくても独自で需要獲得は出来るはず。
ながさきSociety5.0推進費
デジタル関連施策の充実や県民サービスの向上、庁内業務の効率化を図るため、民間人材の登用により、本県のデジタル化・DXを加速
・(新)デジタル戦略補佐監の登用(3名) 6,291,000円
・(新)デジタルコーディネーターの登用(6名) 9,070,000円
補正後予算額(62,135,000円)
所感:人件費を9か月分で計算すると、デジタル監 23.3万円/月、コーディネーター 16.7万円/月ですが、民間からこの金額で来るのかどうかが疑問。せめて倍は必要でないかと。
スマート県庁プロジェクト費
先進技術の活用により県庁内のノンコア業務(職員でなくともできる判断不要な業務)の省力化が可能となるシステムを導入
補正後予算額(51,329,000円)
所感:業務の省力化は必要ですが、わざわざ高額な先端技術を活用しなくても出来る事は沢山あると思います。
(新)建築地図情報デジタル化事業費
これまで紙媒体で管理し、窓口で閲覧していた各種道路や区域などの情報を一元的にデジタル化し、オンラインで公開することで、利用者の利便性向上及び業務効率化を推進
補正後予算額(5,350,000円)
所感:建築地図だけでなく、あらゆる情報を同様にオンラインで閲覧可能とした方が良いと感じます。
(新)ながさきデジタルライブラリー事業費
県立図書館のサービスを来館しなくても利用できるよう、電子図書館システムを導入し、郷土資料のデジタル化及びアーカイブ構築を実施
・電子図書館システム導入 23,301 ・郷土資料のデジタル化及びアーカイブ構築 14,920
補正後予算額(38,221,000円)
所感:全て電子化した場合、図書館そのものが要らなくなるのでは?
(新)保健所デジタル化推進事業費
保健所における新型コロナウイルス感染症対応のさらなる迅速化及び通常業務との両立を図るため、ICTを活た保健所のデジタル化等を推進
・公表資料等作成ツールの構築
・疫学調査システム等の導入
・電子黒板などのICT環境の整備等
補正後予算額(15,906,000円)
所感:全国の保健所と同じ課題を抱えているはずなので、デジタル庁との連携が欠かせないテーマではないでしょうか。
(新)デジタル鳥獣対策サポート推進事業費
イノシシ等による農作物被害対策の強化のため、スマートフォンアプリを活用した、捕獲情報等の一元管理が可能となるシステムを構築
・捕獲管理アプリの改修
・モデル市町でのアプリ実装に係る経費
補正後予算額(9,513,000円)
所感:全国の保健所と同じ課題を抱えているはずなので、デジタル庁との連携が欠かせないテーマではないでしょうか。
(新)デジタル園芸サポート推進事業費
スマート農業の普及拡大に必要な栽培管理マニュアルの作成のため、施設園芸農家等へのスマート機器(本県オリジナル低コスト型統合環境制御機器)の設置によるデータ収集・解析を実施
・農家等への統合環境制御機器設置
補正後予算額(140,180,000円)
所感:もう少し詳しい内容が知りたいです。
(新)デジタル畜産サポート推進事業費
スマート農業の普及拡大に必要な飼養管理マニュアルの作成のため、肉用牛・酪農農家へのスマート機器(発情発見ICT機器)の設置によるデータ収集・解析を実施
・農家への発情発見ICT機器設置
補正後予算額( 50,299,000円)
所感:園芸と同じ所感。
総括
外部人材の登用や中小企業のDX支援・一次産業のスマート化など、概ね公約で掲げた通りの項目を予算化しているように感じます。
しかしながら、
- 中小企業支援は要件や基準、その前提となる「長崎県が考えるDX」の基本方針が不明確であるため、不必要かつ高額な「えせDX」の食い物にされてしまうのでは?
- 外部人材の登用に関しては、金額が少なすぎるように感じるため、本当に優秀な人材が集まるの?
- 公約で掲げられていた「ICTリテラシーやプライバシー研修教育を通した人材育成」の予算は??
といった疑問が残ります。
DXを進めるポイントは、「人材をどう育てるか?」という点です。
外部人材の登用は9名予定されていますが、当然それだけでは4,000名を抱える県職員のDX化には不十分です。そのため、
職員の技能訓練を通じてDX支援員・アドバイザーを増やす
事により、県内企業のDX化を同時並行で進める方針が望ましいと考えられます。