地域の見方を変えると福祉実践が変わる

福祉実践

この本を読みました。


皆さんは「福祉」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

私はどちらかと言うと、地域ではなく、「行政側がどうにかすべき問題」だと思っていました。

「地域や住民のニーズに対して、行政がサービスを提供する事こそが福祉」みたいなイメージです。

ところが本を読んで、その見方が変わりました。

結論を先に言うと、「福祉は行政だけでなく、皆のもの」だという事です。

本日は事例として、五島市の「地域福祉計画(第二期)平成29年~平成32年」の内容のご紹介です。

https://www.city.goto.nagasaki.jp/s028/010/030/010/fukushi.pdf

住民の主体的なかかわりが大事

福祉計画にも大きく書かれている通り、「みんなの」問題です。

福祉計画より抜粋

ただし、この「みんなで」をどう実現していくべきなのか、という部分が課題です。

本日は、現状の課題について、気が付いた点をご紹介します。

計画策定のプロセス

冒頭に紹介した本によると、地域福祉は「住民の主体化のプロセス」であり、「計画段階から住民が主体的に関わる事」が大事だとされています。

ところが、五島福祉計画では、

住民等の代表として、市民公募、学識経験者、社会福祉関係者など8名

とされています。もちろん、数が多ければ良いという話ではありません。が、これでは理念に掲げてある、「みんなで」が実現できるのでしょうか?

同じ計画を作るにあたって、例えば滋賀県の東近江市では、

  • 42名の策定委員に、市社協職員や県社協の職員も加わって、全体で65名ものメンバーで、毎回ワークショップ形式で委員会が実施された。
  • 1回あたり2時間の会議を通じて、活発な議論が交わされた。

と紹介されています。さらに本書では、

「住民自身が地域の課題を明確化し、いかにして計画を作っていくのかという計画作成のプロセスが大事となる。」

と述べられています。こうした事からも、計画の段階から、より多くの関係者を巻き込む工夫が必要だと考えられます。

公開性

私もつい最近、「地域福祉計画」の存在を知りましたが、その認知度はかなり低いのではないでしょうか。

実際、五島市の市議会でも、この「地域福祉計画」という単語自体、H26年の1回きりを最後に、誰も言及していません。

本によると、

関係者の関係者による関係者のための計画に陥る可能性があるため、公開性を徹底し、より広範な住民の参加・参画のための機会を多様に準備する必要がある。

とあります。まさしく五島市も、この指摘に該当するのではないでしょうか。

「課題」が縦割り

計画の第二章「五島市の現状と課題」については、

  • 地域の課題(人口推移)
  • 高齢者福祉の課題(介護受給率)
  • 障がい者福祉の課題
  • 児童福祉の課題
  • 生活保護の課題

というような形で、「行政機関の縦割り構造からみた数値」しか紹介がされていません。

より問題を「ワガコト化」するためには、住民の生活に根差した「横軸」での課題抽出が必要となります。

そうした視点が欠落し、縦割り視点での課題しか紹介されていないので、あまり課題としてピンとこない形になっています。

主体は「市役所」と「社福」のみ

中身の行動計画については、

  • 五島市はこうします
  • 社会福祉協議会はこうします

以上の部分については言及がありません。

その中身も、従来の数値目標を踏襲するだけの項目が多く、「今までと同じように続けます」という印象が強いです。

それ以外の活動主体については、

  • 「街づくり協議会」の中に新しく部署を設ける

としか書かれていません。全体的に

とりあえず作ったけど、さして熱意の感じられない計画書

であるいう印象を受けます。

今後への提言

現在は、行政と社会福祉協議会だけで、問題解決をしようとしているように見えるし、そもそも何が課題なのか、今一つピンと来ません。冒頭の本を読んだ感想も含めると、

もっと住民に任せるべきでは?

と感じました。

私はこれからの行政の役割としては、

いかに住民の主体的な活動を後方から支援するか?

が大事だと考えます。

そのため、計画作成の段階から、より広範な分野で人を集め、公開しながら作って頂く、というプロセスが必要になると感じます。

正解はおそらく、

遠い政界にあるのではなく、

近い生活の中にあるはずです。