「費用対効果」の壁を乗り越える

久賀島の交通網

久賀島は、現在島民が300人を切る小さな島ですが、昨年は島を含む集落全体が世界遺産登録されました。

FBで情報収集をしていたら、こんな投稿が(以下、抜粋)。

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五島つばきチャンネル(ローカル局)で、中学生議会の放送をやっていた。

五島市の各中学校から代表の生徒が集まり、市長に質問するというもの。久賀からも2人(3人の島の子のうちの2人)が出ていて、

主に「久賀島内の道の整備(五島方面、細石流方面の道が狭すぎて島民だけでなく観光客にも危険)」「久賀ー福江間の船の増便か橋の建設(高校に行くのに親元を離れなくてはならず、親の経済的負担が大きいため、久賀から通学できるようにして欲しい)」という議題が出された。

でも市長は「潜伏キリシタンの巡礼を感じるために道の整備はしない。」(夫はそれを聞いて、じゃあ観光客にも歩いて貰うつもりか?と)「現時点で赤字路線であるため船の増便はできない。人口280人の島に橋を架けるのは費用対効果を考えれば無理」と。。ずいぶん厳しい言葉。五輪への道は観光客が増えてから、いつ事故が起こってもおかしくない。

おまけに事故が起こっても、電話が繋がらない場所が多く、連絡すらつかない。事故が起こってからでは遅いと思う。実際は個人所有の土地もあり、道の拡張は難しいと聞くが。。

そして、二次離島や村落の開発に費用対効果を考えたら、何もできないのではないか。

この貴重な島の中学生たちが今後島に残る、帰って来たくなる島にする為に、ほんの少しでも希望が持てる回答をして欲しかったと思うのは私だけだろうか。。

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従来の流れを踏まえると

  1. 政治主導で「世界遺産」を盛り上げた割には
  2. 交通網を含めた島の「維持管理の方針」がなかったため
  3. 久賀島は観光PRに利用され、大事な交通がロックされてしまった

という印象です。

ここで大事な点は、費用対効果という大きな壁です。

投稿された方の指摘にもある通り、費用対効果だけを考えれば、小さな島の交通網は存続が不可能です。

さらにこの考えを島の全体に適用していた場合、時間と共に小さな島の交通網が閉鎖され、無人島が増えていきます。

つまり、この費用対効果の壁を乗り越えない限り、福江島を含む五島列島には、暗い未来しかなさそうです。

本日は「費用対効果の壁を乗り越えるためには?」というテーマで、手順をご紹介します。

手順①.サービスの最適化

現状の問題点の一つは、費用の掛け過ぎです。よく私が耳にするのは、「路線バスの空席率が高い」という事です。

車社会の五島では、本土の定期バスの利用率は低く、そのため赤字の路線となっている部分が大きいです。

それは陸上の路線だけでなく、海上の路線も同様です。

赤字論戦の解消に向けては、

  1. 利用者のデータを取得し
  2. ニーズに合わせて、サイズを最適化する

という、いわば大掃除のような整理が必要です。

手順②. 規制の緩和

次に、乗合いタクシーや自動運転などの規制を緩和して、島全体で交通網を維持する仕組みの導入が必要です。

島は物理的に閉じた空間ですので、

島独自の交通ルール

があった方が、最終的には最適化されます。

古来から、人々は「島の地形に合わせて」独自の栽培や農耕・生活スタイルを実践してきました。

それと同じように、日本全国共通の「道路交通法」は、島に適用すべきではありません。

現代では、「国土の均衡ある発展」の時代は終わり、「末端の緩やかな衰退」が始まっています。

そうした時代の変化を受け、五島列島が持つすべての島々には、その島の地形に合った交通ルールが導入されるべきです。

手順➂. 人とお金の募集

道路の開発を巡っては、

予算をどこから取って来るのか?

という部分がボトルネックになります。

従来のように、国や県からのお金に頼っていては、先ほどの

費用対効果の壁

にぶち当たります。しかし現代は、経済合理性よりも、「意味」の方が重要視されます。例えば人的なリソースが必要だったら、島留学制度の進化版として、島体験制度の導入が可能です。

無料&飲食付きで泊めてあげるから、世界遺産の島で道路づくりのボランティアをしてみませんか?

と募集することが出来ます。さらにおカネの問題だったら、従来のようにクラウドファンディングで募集を掛ける事が出来ます。

従来の観光政策では、

観光地を巡礼する事

が訪問する意味でした。ところが、

「動画に残る想い出を作る事」に意味があるこれからの時代では、

久賀島で、手作りで自分たちの道路を創る事

という「コト消費」にニーズがあります。

こうした部分に目を向ければ、従来のように

オカネガナイカラデキマセン

という言い訳は通用しなくなります。

まとめ

現在の市政は、「費用対効果の壁」の前に立ち往生し、人口の少ない久賀島の交通網が悲鳴を上げています。

しかし、この壁を突破しない限り、五島列島の交通網と生活には、明るい未来はありません。

費用対効果の壁を突破するには、

  1. 現状のサービスを最適化して赤字を減らし
  2. 規制緩和して島独自の「新しい交通ルール」を策定し
  3. 「コト消費」をターゲットとした共犯者を巻き込む

という方法が有効です。