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選挙の立会人
五島市は2019年の選挙から、
「選挙立会人の市民公募」
を行い、見事私が当選しました。(倍率は不明です)
理由はおそらく、人手不足と人件費の削減でしょう。
本日は、その仕事を通じて思ったことのご紹介です。
過酷な仕事と長時間拘束
立会人の仕事は、AM8:00~PM20:00という、ハードスケジュールでした。
そして仕事の内容は、
投票箱の前に座って不正行為(ほぼ起きない)のチェック
という、極めて簡単な事です。事実上、「やること」はありません。ただ座って見ているだけです。
一度やってみて頂きたいのですが、
「何もせずにただ座り続けていること」
は、絶望的につらいです。お昼の12時になっても、
あと8時間かー。。。(長っ!)
っていう感じです。
更につらいのは、
- 原則として建物から外に出てはいけない
- 離席が可能なタイミングはトイレのみ
- お昼は弁当を別室で食べる(夕食はなし)
という事です。どうしてこのように、拘束時間が長く、融通が利かないかというと、
「長崎県の定める期日前投票の決まり」
だからだそうです。
まずは、そもそも論から、ご紹介します。
民主主義は誰のため?
選挙が近まると、あちらこちらに選挙ポスターが張られ、
「選挙に行こう!」
キャンペーンが展開されます。
公的なキャンペーンには税金が投入されている訳ですが、最近では商店街やなんかでも、民間主体の割引キャンペーンが行われるケースがあります。
http://www.koga-style.com/senkyowari/
しかし、私たちを「選挙に行こう」と促すのは、誰の意思なのでしょうか?
おそらく、その出所は日本国憲法の「国民主権」から来るのでしょう。
しかし、憲法で謳われている「国民主権」はあくまで「原理原則」です。声高に主張し、他の誰かに強要する類のものではないと思います。
私と同じく立会人として仕事をした、70歳の元教師の方の意見では、
私は、皆が選挙に行かない結果として、政治家がのさばり、社会がダメになり、そこで初めて皆が選挙の大切さに気が付く、という形でも良いと思う。
と言っていました。確かに、そういう意見も一理ありますよね。
もっと広く考えれば、
選挙権をあえて行使せず、政治家を選ばない
というのも、市民の選択の結果です。ですので、投票率が低いという事も、逆の意味での意思表示だと言えます。ですので私は、
「投票率が低い=民主主義の危機」
という考えは、誤解だと思います。
まあそれはさておき、以降は「現在の選挙制度が抱える問題」について考えていきます。
①多様な意思を汲み取れない
五島市は高齢化の島です。人口の38%が65歳以上です。更にこの日は平日だったという事もあり、65歳以下の人は2~3割程度だった気がします。
そう、選挙に来るのは7割以上が高齢者です。そして中には、
- 足が悪く、自分の足で歩くことが困難な方
- 耳が悪く、説明を聞き取れない方
- 腕が弱く、文字を書くこともままならない方
という方も少なくありませんでした。それだけではなく、身体的・精神的なハンデを背負っていそうな方も来られました。
五島には、そうした方々が決して少なくありません。
たまたまその日選挙に来た人は、そんな方々の「ほんの少し」だったと思います。
殆どの方にとって、選挙に来て投票すること自体、大きなハンデです。
全国的に見れば、引きこもりの方々は100万人に及ぶと言われています。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/hikikomori/articles/crisis_03.html
そこで私が感じたのは、
これは本当に、多様な民意を汲み取る選挙のスタイルなのだろうか?
という事です。物理的なハンデや精神的なハンデを背負う方は、そもそも「投票行為」にさえたどり着けません。
②「世代間格差」が大きすぎる
選挙は原則として、一人一票です。
分かりやすく言うと、「認知的な判断能力を殆ど失った高齢者」と、「現役バリバリの経営者」
の一票の価値は同じです。現在の日本では、
「医療と介護を巡る社会保障の在り方をどうするべきか?」
が大きな政治課題になっていますが、これは
「増加する高齢者への給付をいかに抑制するか?」
という問題に帰結します。
財源は有限であることため、当然「世代間の綱引き」が生まれます。そうなったとき、政治家はどちらの方を向くでしょうか?
マーケティングの感覚で「票の多い年齢層」と「選挙行動を行う年齢層」を考えれば、
- 高齢者にとって心地よい、優しいプランや政策
を提示すれば、当選確率がグンと上がるでしょう。政治家が高齢者を優遇するのは、自身の生存戦略として合理的な選択です。
つまり、どれだけ「若い世代(40代以下)」が真面目に政治について考えて、意思の表示をしたとしても、結局高齢者の割合が高いので、世代間闘争に勝ち目はありません。
それで果たして、「将来に向けた政治」が行われるのでしょうか?
日本の社会を一つの大きな船に例えれば、皆が先頭に集まって、船が沈んでしまう気がします。
そこで、こんな事を考えてみました。
1票の格差を是正するアイデア
*投票権の譲渡を認める(青年後継人制度と同じ要領)
*投票権の返納を認める(免許の返納と同じ要領)
*0歳からの投票権利を認める(親族が代行)
*人口ピラミッドに基づき「1票に対する係数」の調整(=若年層の力が増す)#選挙改革 #1票の格差— 中西だいすけ (@wakuwaku230) 2019年4月2日
➂高い選挙コスト
令和元年時点での選挙システムは、笑えるくらいにアナログです。
- 幾重にも施錠された、頑丈な「投票箱」
- 毎日キチンと封筒に押される、関係者の「割印」
- 候補者の名前を記載する「紙と鉛筆」
中でも私が驚いたのは、「投票用紙」です。
開票作業を行うときは、「折られた投票用紙を開くこと」に多大な時間が掛かるそうです。
そのため、投票用紙は特別に、「折られても自然に開くように」特別な工夫を施して作られているそうです。
そして当日は、私を含めて合計8人の選挙関係者がその場に居ました(12時間も!)。その間に来られた有権者は160人くらいだったので、どれだけ暇だったかが想像できるかと思います。
HUFFPOSTによると、
2012年の衆院選では、約650億円の税金が使われている。
そうです。
https://www.huffingtonpost.jp/2014/11/11/election-cost_n_6143130.html
もっと良いお金の使い方があると思いますが、そもそも選挙行為はアナログすぎるため、コストが高いのです。
④期日前投票という時代遅れな制度
以下、引用です。
期日前投票制度は、2003年6月11日公布、同年12月1日施行の改正公職選挙法によって創設された。
投票は原則として投票日に行われるものであるが、この制度によって、選挙の公示日(告示日)の翌日から投票日の前日までに投票することができる。
とあります。この「投票は原則として投票日」というのが未だに残っているため、期日前投票では
当日、選挙に行けない理由
を書かされます。
そんなこと聞いて、どうするの?
と思いますが、「それが決まり」であるため、有権者も渋々適当な理由に〇をつけます。
令和の時代は、ますます人のライフスタイルが多様化していきます。ですので、「投票日(皆が一斉に行う)」という概念自体を撤廃し、「投票期間」という設定に改めるべきです。
➄「どんな意思表示」か分からない
選挙の開票箱を開けて分かるのは、「投票者の名前」だけです。
誰がいつ、どんな想いで投票したのか、辿ることは不可能です。
それって、何だかもったいなくないですか?
候補者からしても、今一つ
- なぜ自分が支持されているのか?
- 有権者はどんな想いで一票を投じたのか?
読み切れてない部分があるかと思います。
実際、
その人を応援したいから、
というポジティブな理由よりも、
あの人が嫌いだから、
というネガティブな理由で投票する人も少なくありません。
現在ではマイナンバーがあるので、せめて個人情報の部分だけは伏せて、
「40代・女性の意見」
みたいに辿ることが出来れば、より一層、その候補者に対する「有権者の声」が可視化され、選挙にも良い意味での「マーケティング感覚」が備わっていきます。
現状の課題と今後
以上の課題をまとめると、現在の選挙制度は
- 多様な意思を汲み取れない
- 「世代間格差」が大きすぎる
- 選挙コストが高すぎる
- 期日前投票という制度が時代遅れ
- 有権者の「想い」が汲み取れない
という課題を抱えています。
こうした課題を一挙に解決するのが「ネット投票」です。
令和元年時点では、納税もインターネットを通じて行えます(e-tax)。
デバイスを使い慣れない高齢者から反対の声もあるかもしれませんが、タブレット端末で指紋認証すれば、すぐに慣れるはずです。
「アナログからデジタルへ」という変革と合わせて、根本の
「政治制度の仕組み」も、変革が求められています。