オールジャパン戦略
10月4日、ソフトバンクとトヨタが共同出資で新会社を設立した、との報道がありました。
自動運転をめぐり、海外勢の技術やサービスの展開に対して、危機感を抱いた日本のトップ企業が連携した、という点では大きな出来事です。
それと同時に、自動車業界で起きている変化は、単に企業間同士の競争ではなく、国の法体系や罰則・社会のあり方も含む、国家レベルの問題も含んでいます。
とりわけ少子高齢・人口減少という課題を抱える日本は、新しい社会の仕組みをデザインする、という分野で海外をリードしていけるかどうか、が課題となります。
そこで本日は、オールJAPANで自動運転技術の開発を急ぐ上で、国境離島の島で実証実験を行うメリットをご紹介します。
ざっくり言うと
- 離島は課題の宝庫であり
- 島は物理的な閉鎖空間であり
- 技術活用が国防にも役立つ
からです。それぞれご紹介します。
① 離島は課題の宝庫
例えば五島列島の福江島は、人口4万人弱と、そこそこの人口を保ちながら、道路も整備されています。
そうした中で、日本全体で起きている人口減少が、著しく進んでいるのも離島です。高校生の9割以上は卒業すると島を出ます。
島は基幹産業に乏しく、第一次産業も後継者不足に苦しんでいます。
五島市の高齢化率は脅威の38%で、超高齢社会の未来予想図であるといえます。
免許の返納に伴う買物弱者対策や、観光促進としての自動運転技術は、島の「高齢社会への処方箋」として、近い将来の世界全体にも応用できます。
② 島は物理的な閉鎖空間
日本の中で、最大限のスピードで実証を行うためには、やはり規制緩和が必要です。
サンドボックス、という言葉がありますが、グローバルな開発競争では
「いかに多くの失敗を経験できるか?」
という点が、実用化に向けた鍵です。
しかし中々、都会の真ん中では大掛かりな実験は出来ません。
そうした点を踏まえると、外部と物理的に繋がっていない島こそが、自動運転の実証実験としては最適です。
③ 技術活用が国防にも役立つ
国境離島の島々は、常に外国との窓口でした。
例えば五島には、古くは遣唐使から始まり、長崎からキリスト教が伝来したという時代もあります。
昨今、東アジアでのパワーバランスの変化(中国のパワーアップ、アメリカの内向きな姿勢)を鑑みると、日本は自国の境界に対する感度を、今以上に向上させる必要に迫られるでしょう。
具体的には、他国の軍事的動向だけでなく、現在グローバルに起きている環境変化の動きを、いち早く入手する必要があります。
そうした国防の監視には、自衛隊による人海戦術的なマンパワーではなく、「最先端技術の活用による省力化」が期待されます。
具体的には、自動運転船による領海監視や、ドローン飛行による領空監視です。そうした基地を離島に造り、網を張ります。
その端緒として、陸上での交通自動化(=自動運転)を実現することに意義があります。
陸上輸送を自動化することは、人手不足に伴う経済の停滞を食い止めるだけではなく、技術活用の機運を高める糸口にもなります。
まとめ
日本の国境離島で自動運転を推進すべき理由は、大きく以下の3つです。
- 超高齢社会を救う糸口を見つけられる
- 閉鎖空間を実現し、実用化の速度を高められる
- 技術活用を安全保障に転用できる
こうした点を踏まえて、国境離島の島々(例えば五島列島)で自動運転が推進されると、島は
「最先端産業の集積地」
として、いわゆる地方創生に実現することが出来ます。