介護保険制度の仕組み
40歳以上の方が受けられる「介護保険制度」は、町や市が(保険者)となり、費用の支払を行っています。五島市の場合は、こんな内訳です。
- 国(25%)
- 県(12.5%)
- 市(12.5%)
- 第一号被保険者(23%)
- 第二号被保険者(27%)
本日は、出張で前講講座で聞いた内容と、今後の見通しを紹介します。
充実しすぎなサービス
介護が必要となった高齢者(要介護認定が必要)を要支援1~要介護5まで区分し、その人に見合ったサービスを「ケアマネージャー」が作成します。
介護サービスには沢山の種類があり、全体を把握するのが非常にややこしくなっています。
- 訪問系サービス
- 通所系サービス
- 短期滞在系サービス
- 居住系サービス
- 入所系サービス
こうしたサービスの中にも、更に細分化されたサービス体系があります。
高齢化と増える負担
全国的に介護保険料は、高齢化率に比例して、右肩上がりです。五島市の場合はこんな感じです。
- 第1期(H12~H14):3241円
- 第2期(H15~H17):4553円
- 第3期(H18~H20):5318円
- 第4期(H21~H23):5298円
- 第5期(H24~H26):5920円
- 第6期(H27~H29):6233円
- 第7期(H30~H32):6760円
18年で倍以上になっていますが、今後も保険料は上がり続けると試算されています。
ちなみに五島市市議会(H30年3月)の情報によると、
高齢化率は38.02%で、3人に1人以上は65歳であります。また介護認定者は20.05%で2,870人との報告もあります
と紹介されています。次に、第6期から第7期への上昇を少し詳しく見ていきます。
費用が上がった原因は?
五島市では、第6期の計画時点で、要介護認定率(要支援も含)は24.39%でした。
これが第7期(30年の1月時点)で20.05%、4.34ポイント減少し、認定者数も506名減少しています。
単純に考えれば、要介護認定率の低下に伴い、保険料も安くなりそうですが、そうはならなりませんでした。その理由は二つ。
①介護報酬改定
29年度臨時の介護報酬改定によりまして、介護職員の人材確保のための処遇改善、これが拡充をされまして、これが1.14%であります。
②負担割合の増大
1号保険者、65歳以上の方にかかる負担割合、これが22%だったのが23%に上がりました。これにより、負担金額は4.5%アップしました。
第7期を見ると、五島市は全国平均と比べて高い水準にありますが、皆この制度でアップアップな状態となっています。
それぞれの利害関係者ごとに立場を見ていきましょう。
納税者の立場
年金の額が減らされる一方で、介護保険の料金は上がっているので、五島市民(65歳以上)は非常に苦しんでいる形です。
国民年金の額が10万円以下であることを考えると、大体1ヶ月の収入の1割程度が保険金で天引きされる形です。
特に離島では、車が生活必需品でありながら、ガソリン代が高いです。
家賃も街中はそれほど安い、というわけでもありません。
お昼時の100円ショップに高齢者が殺到するのも納得できます。
行政の立場
国、県、市は、介護保険の金額の半分を負担しているため、保険料の増加は非常に頭の痛い問題です。
2025年に向けた介護費用の増大を防ぐため、国は
「施設(お金かかる)から在宅(お金かからない)へ」
を推進しているそうです。
介護と医療の現場を病院から地域に移すこと(地域包括ケアシステム)で、出来るだけ施設への入居を減らす方針です。
ケアプランのチェック
要介護の認定をされた人には、ケアマネージャーによる「ケアプラン」が作成されます。
市議会では、このケアプランのチェックを推進し、介護保険料の抑制を図るべき、との指摘もされています。(H30.市議会6月定例)こうした声を反映し、五島市では、
30年4月より自立支援型の地域ケア会議を開催してございます。
このケア会議では、専門職の方々の参加をいただいて開催しておるんですが、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士などこのような方々に参加していただいて、その居宅介護支援事業所のほうからケアプランを提出
してもらっているそうです。現在はこの件数が3件に留まっているそうですが、今後は費用の抑制に向けて、より入念なチェックが入りそうです。
事業者の立場
事業者にとって、今後一番頭の痛い問題は、「人手不足」でしょう。今後も入居者が増えることが見込まれるため、人材の確保は喫緊の課題です。
国は「処遇改善加算」という制度を設けて賃上げを図っていますが、やはり3Kとか5Kとかいうネガティブなイメージの方が強い印象です。
実際、処遇改善の実感を得ているスタッフも少ないそうです。(参考)
国内だけでは労働力不足を補えないので、外国人労働者も今後はますます増えていくと見られます。
地域の立場
五島市では、「高齢者の見守り」のため、平成25年度に五島市高齢者見守りネットワーク連絡会が設置されています。
構成機関は36にも及び、下記のような構成となっているそうです。
- 高齢者宅を訪問する民間の事業者
- 介護保険の事業所
- 町内会連合会
- 老人クラブ連合会
- 民生委員・児童委員協議会
- 警察署、消防署、保健所、市役所
見守り活動に加えて、買物支援や通院支援を行っています。
【買物支援】
五島市では、地区ごとに支援事業が行われています。
- ワンコインサービス
- 奥浦地区の買い物弱者支援事業
- 奈留地区の移動販売
- 玉之浦地区の移動販売
【通院支援】
五島市では、移送サービスを実施しています。
- 福祉車両による福祉有償運送の移送サービス
ただしこれは、介護タクシー等の公共交通機関の利用と、身体状態によりタクシー等の利用が困難な方限定だそうです。
独居高齢者
独居高齢者が増えると、社会的にもマイナスが大きくなります。
そのため五島市でも、毎年、地域の見守り活動に役立てるため高齢者生活調査を実施しているそうです。
さらに平成28年9月から、生活支援サービス充実のため、75歳以上の高齢者のニーズ調査もしているそうです。
その調査では、36.6%が独居の高齢者で、世帯数で見ると、高齢者のみの世帯というのは43.1%という結果だったそうです。
まとめ
国は、高齢化前の制度設計段階で、「充実しすぎなサービス」を作ってしまった感があります。
そのしわ寄せが徐々に始まっており、更にこれから、国と事業者の抱える負担は大きくなっていきます。
段階の世代が後期高齢者となる2025年に向けて、国は費用負担軽減に向けた取組みを行っています。
そのポイントは、「施設から在宅へ」です。
https://nakanishidaisuke.com/2018/09/18/social-aging-3/
この方針に連動して、全国の市町村単位で「地域力」を高めるための取組みが推進されそうです。