エネルギー基本計画とは
朝日新聞の情報によると、
エネルギー政策基本法で政府が策定を義務付けられた計画。
原子力や再生可能エネルギー、石炭などの中長期的な位置づけを盛り込み、少なくとも3年ごとに見直すことになっている。
計画は閣議決定され、自治体や電力会社などは計画の実現に向けて協力する責務を負う。
とあります。2018年の夏に、正式に閣議決定をするようです。
2018年の5月~ 素案の審議が行われており、当時の段階では、
- 2030年の電源に占める比率を原子力発電は20~22%
- 再生可能エネルギーは22~24%
にする従来の目標を、今回の計画でも維持したそうです。この方針は2015年の6月時点から変わっていません。
ところが、現在のままだと、原発数値目標の達成は不可能だと考えられます。
本日はその理由を3点ほどご紹介します。
理由1.反原発が根強いから
震災から7年。全国各地で、脱原発&反原発の機運は高く、各地で抗議デモが巻き起こっています。(参考)
そうした反対運動を背景として、現在では電力の購入も自由化されていますので、反対者層を中心に、
原発で生まれた電気なんて買わん!
という動きも出てきそうです。そうなると、益々大手電力会社の収益が悪化し、原発を推進する体力が削がれていきます。
理由2.原発が寿命を迎えるから
東日本大震災以降、既存の原発には「40年ルール」が適用されました。一部の例外を認める「+20年ルール」もありますが、どちらを合わせても、既存の原発はドンドン老朽化していきます。
少し小さくて見えづらいですが、上の図は青い線が40年運転、オレンジの線が60年運転の場合を示しています。
グラフによると、24%の原発比率を満たすためには、42基の原発を動かす必要があります。
2018年6月現在でまだ6基でして、九州電力ではポンプのトラブルとかも相次いでいます。
理由3.新規で建てる人がいないから
未曾有の大災害を教訓として、原子力規制委員会のハードルが高くなりました。
当然と言えば当然ですね。
この規制をクリアするためには、世界最高水準の安全性が求められます。
東京電力さえも実質的に国有化されている状況にあって、これだけ高いハードルをクリアし、事業家に向けた投資活動ができる事業者は存在するのでしょうか?
まとめ
東日本大震災を契機として、原発を維持、推進していくことは、様々な点で格段にハードルが上がりました。具体的には
- 反原発の市民感情が高まったこと
- 電力が小売自由化され、大手の収益構造が厳しくなったこと
- 老朽化した原発を維持するのが困難なこと
- 新増設の原発に求められるハードルが上がったこと
こういった状況を踏まえると、いかに政府の掲げる「20~22%」という数字が、実現不可能か、お分かりいただけるかと思います。
で、この先どうなるかと言うことですが、大きな方針は2つあると思います。
- 目標達成を諦めて「再エネ」&「火力」路線に流れる
- 国営企業として「原発推進組織」を創設する
これは政治的に大きな分岐点ですが、野党はAを選択してきそうですね。
逆に、自民党政権が持ちこたえて支持率を回復できれば、Bの選択肢も否定できません。