スリランカ三日目、私はバスや電車で移動しなかった。足早にあちらこちらを移動するのは疲れてしまう。
キャンディー周辺を散策
キャンディーの池は、対岸が見通せるくらいの大きさで、ゆっくり一周歩いて1時間くらいである。私はできるだけ時間をかけて、近くにある建物や景色を眺めながら池の周りを歩くことにした。
街の中心部にある池全体が見下ろせるというビューポイントに登ってみると、途中には大学のような施設と、何やら謎めいた平家建物があった。
これはなんぞや?
そう思って見ていると、たまたま入り口で掃き掃除をしている爺さんが、にこやかに声をかけてきた。
「Good Morning ! Where are you from ?」
久しぶりに英語を喋れる現地の人である。私は質問に答え、そこが何の施設であるのか尋ねてみた。
話によると、そこは低学年の子供たちが通うフリースクールらしく、爺さんはそこで読み書きを教えているのだとか。
教室も見せてもらったが、ざっと300人くらいは入れそうな大きな教室である。前方には大きな黒板があり、陸軍が通う士官学校のような雰囲気でもあった。
熱心な爺さん
爺さんは現地の教育について熱弁し始め、ここは「公設の施設」でなく、貧しい子供たちのために建てられた「私設の施設」である事を教えてくれた。
更に爺さんは、そこで教えられるアートの仏教的な意味を、私に教えてくれた。
「Please come, come.」
と言って、大小さまざまな刺繍が飾られている部屋に案内してくれた。そこにある多彩な刺繍は、全て学校の子供が作った作品であると言う。刺繍は細部まで凝っていて、売り物としても通用するレベルのように見えた。
中には私の好きな象の刺繍もあるではないか。
熱弁に乗せられる私
「買ってもいいよ、いくら?」
安易にそう言ったのがいけなかった。
爺さんはキラリと目を輝かせて、刺繍二枚で10,000ルピー(7,000円程度)になると言った。
「え、たかw」
予想外の値段に思わず
「い、一枚でいいです」
と言うと
「二枚で7,500ルピーに負けてやろう」
と興奮気味に言ってきた。私は一枚で十分だし、お金もありませんからといって、一枚だけ買うことにした。それでも爺さんは満足したらしく、私の頭と足に、聖水のような水をチョコンチョコンと塗り付けて、
「旅の安全を確保するためのものだよ」
と言って祈りを捧げた。
子供への支援、買い物ではなく。
私はそう信じて、気さくな爺さんと別れた。
話を聞いている間じゅう、蚊に刺されたことが心配であった。