孤児の象に会おう
スリランカ旅行の二日目、キャンディーから「象の孤児園」に行くために、バスに乗ることにした。
市内の中心地にあるバス停では、狭いバスの間を縫うように移動しないと目的の場所へたどり着けない。しかしバスも容赦なく突っ込んでくるので気が抜けない。「地球の歩きかた」を頼りに何とかバスに乗るが、さてどこで降りれば良いのかわからない。
バスはちょこちょこと止まるが、アナウンスといった気の利いたものはなく、外国人からすると、情報を得る手段がない。隣に座ったおじさんに本を開いて見せて、その場所を指差して示した。
「これに乗ってればいいよ。」
と、面倒くさそうにおじさんは自分の座席を指差しながら答えた。しかしバスは全く関係のない場所にたどり着き、私はキョトンとしていると、降りるように指示される。どうやら終着駅であるらしい。
間違った場所に来てしまった。。。
気をとりなおして、近くのバス停から再び象の孤児園に向かうべく、道行く人々に聞いて回る。ようやくそれらしきバスを発見し、隣に座ったおじさんに尋ねてみると、たまたま彼も、家族と一緒に象の孤児園に行くつもりであると言っていた。
一緒ならば大丈夫だろうと一安心。30分ほどバスに揺られて、ようやく目的地に到着した。
早速入ろうとするが
なんと驚いたことに、園内の入場料は外国人向けの価格で2500円程になっていて、10年前(2005年に書かれた本で示されている)の値段の5倍となっていた。
(インフレ恐るべし。。。)
それでもお金を払って入場すると、大小の象が悠然と園内を散歩している。久しぶりに象を見て、気分が高揚した私はしげしげとその様子を眺めていた。何を隠そう、私は象使いなのである。(詳細はラオス編で)
象たちは行列で行進し、開けた放牧エリアに連れて行かれる。そこは枯れた枝を敷き詰めた場所で、象はのんびり食事をしている。イメージとしては、草原の中で牛や馬が放し飼いされている感じに近い。
その食事風景を眺めていると、近くにいる飼育員が私を手招きし、写真を撮ってくれると言ってきた。私は親切な人に感謝を告げて、何枚か象と一緒に写真を撮ってもらった。
「もう大丈夫です。ありがとう。」
と言って彼に近寄ると、
「オーけ。チッププリーズ」
と言って手を手を差し出してくる。
(ああ、そういうことね・・・)
気づくのが遅かった私は潔くチップを払うことにした。そして先ほどバスで隣に座っていた家族も近くで象を観察していた。親切そうな主人が私に近寄ってくる。
「一緒にランチを食べないか?」
彼は私にそう提案をしてきた。断る理由もなかったので同意すると、奥さんが私に頑丈な葉で包んだ、暖かい物体を渡してくれた。なんだろうと思って開けてみると、魚と香辛料で和えてある、ほんのり暖かいお米が出てきた。
ちょうどお腹が減っていたので、ありがたく頂戴しようと思ったのが、困ったことに箸やスプーンがない。
家族連れはそれを、水道で軽く手を流してから、平然と素手で食べ始めた。
私はせっかくもらったものを食べないのも悪いと感じたので、思いきって彼らと同じように、素手でいただくことにした。
(。。。こぼれて食べづらい。)
しかしその料理は、見た目以上に美味しくて、スパイスの効いた味わいは家庭的な暖かさに包まれていた。
素手でもなんとかなる
思えば我々日本人も、素手でポテトやおにぎりを食べているではないか。そう考えると、飯を素手で食べることに対する抵抗感は自然に失われていった。