先日、長崎県病院企業団(五島地域)の決算報告会(病院運営協議会)に参加しました。
年に一度、病院側から運営状況と決算の説明を受け、参加者が質疑を行う場です。
会場には、五島市議会議員だけでなく、五島市役所の幹部職員、長崎県振興局や保健所の幹部も同席しており、五島の医療が「病院だけの問題ではなく、行政全体の重要課題」として扱われていることを改めて実感しました。
五島の医療は「みんなで支える」構造になっている
報告会を通じて強く感じたのは、地域医療は、診療報酬だけで完結する世界ではないということです。
五島地域の病院経営は、五島市や長崎県が、補助金・負担金を拠出する形で支えているからこそ、医療提供体制を維持できている面があります。
離島医療は、採算性の論理だけで測れません。救急、周産期、感染症対応、災害対応など、地域にとって不可欠な機能が重なり、その多くは「あるだけでコストがかかる」性格を持っています。
だからこそ、病院・行政・議会が同じテーブルにつき、現状を共有するこの報告会には大きな意味があります。
全国と同じく、病院経営は人件費と物価高で厳しい
決算の説明では、全国で報じられている状況と同様に、病院経営が厳しさを増している実態が示されました。
特に大きいのが、人件費の上昇と物価高(資材・委託・光熱等)です。
医療は人が担う産業であり、人材確保のための処遇改善は避けて通れません。一方で、人口減少が進む地域では、外来患者数が構造的に伸びにくい。結果として、「頑張って診療しても、費用増が上回る」という苦しい構図が生まれやすくなります。
病院側からは、増収の方向性として
・入院の確保と単価の改善
・診療報酬の「加算」を取りこぼさず取得する
・体制整備(感染対策の加算取得など)
といった説明もありました。
人口減少という制約の中で、どう「医療の質」と「経営」を両立させるか。簡単な解はありませんが、現場は現場で、できることを積み重ねていることが伝わってきました。
産科を守るために、五島では新しい体制づくりが進んでいる
今回、とりわけ重要だと感じた論点が、分娩体制(産科)です。
五島市では、福江産婦人科の分娩休止を受けて、地域として新たな体制を構築しています。
報告会では、病院と診療所が役割分担して妊婦健診・分娩を支える「セミオープン型」の考え方(低リスクは診療所中心で健診、分娩期は病院で管理、など)が示され、限られた医療資源の中で「地域として分娩を守る」工夫が進んでいることが共有されました。
一方で、分娩の継続は「意思や努力だけ」では決まりません。
・出生数(分娩件数)が一定水準を下回る
・産婦人科医、助産師、看護師など医療資源が確保できない
こうした条件が重なると、維持が難しくなるのは現実です。だからこそ、病院だけでなく、行政としても「子育て・出産しやすい環境づくり」そのものに力を入れていく必要がある、という問題意識も会の中で共有されました。
議会として、数字と現場の両方を見ながら考えていきたい
決算報告会は、単なる「報告」ではなく、地域医療の未来を考えるための材料が一度に集まる場でした。
・病院経営は厳しい(人件費・物価高)
・しかし地域医療は止められない
・市と県の負担で支えている構造がある
・産科など、将来に直結する課題は待ったなし
こうした現状を踏まえ、議会としては、数字(決算)を確認するだけでなく、現場の課題や地域の実情を踏まえた上で、行政の支援のあり方、優先順位、制度設計を議論していく必要があります。
地域医療は、地域の安心そのものです。
今後も、こうした場で得た情報を市民の皆さまと共有しながら、五島の医療をどう守り、どう前に進めるかを考え続けたいと思います。